ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想 『ある明治人の記録』 (石光真人編著)

[内容] 明治維新の時に会津藩士たちが受けた、想像を絶する辛苦が綴られている。 副題は『会津人柴五郎の遺書』 [感想] 柴五郎は1859年に会津藩士の5男として生まれ、逆境の中大変な努力を重ねて 陸軍大将にまでなった人物(87歳没)。 本書は第一部『柴五郎の…

読書感想『世界史を変えたパンデミック』(小長谷正明)

[内容] 歴史的なパンデミックの実態と終息迄の経緯、及び解決に尽力した人々の話。 [感想] 著者は医学博士。 人類は原始から疫病との戦いを繰り返してきた。そのおびただしい犠牲者の数 を見ると、著者が言うように、今回の新型コロナウィルスの悪性度は…

読書感想『すべては導かれている』田坂広志

[内容] 人の心の奥底にある叡智を引き出すための考え方と実践方法を、著者の体験を 基に解説。副題『逆境を越え、人生を拓く五つの覚悟』 [感想] 著者は多摩大学大学院名誉教授。経営学者。 以下に、副題にある“五つの覚悟”と本書の主題をまとめてみた。…

読書感想『黙って行かせて』(ヘルガ・シュナイダー)

[内容] アウシュビッツの看守だった母親と30年ぶりに再会した娘が、母親の本音を 聞いた時の思いを綴ったノンフィクション。 [感想] 1941年第二次世界大戦中、ヘルガの母親はナチスにのめりこみ、夫と幼い子供 2人を捨ててアウシュビッツの看守となった…

読書感想 『内モンゴル紛争』(楊海英)

[内容] 中国によるモンゴル弾圧・紛争・言語同化政策は、どのようにして起きたの かを、民族地政学の視点から解説。 副題は『危機の民族地政学』 [感想] 著者は内モンゴル出身で、現在は静岡大学教授。 中国によるモンゴル弾圧は、新疆ウイグルやチベッ…

読書感想『健康格差』(NHKスペシャル取材班)

[内容] 健康格差が生じる原因と、それを解消する為の様々な方法と国内外の取組み を紹介している。 副題は『あなたの寿命は社会が決める』 [感想] 本書はNHKで放送された番組の内容を中心に、取材を加えて執筆されたも ので、人が病気にかかる確率や寿命…

読書感想『君は嘘つきだから、小説家にでもなればいい』       (浅田次郎)

[内容] 単行本未収録のものを中心に編集されたエッセイ集。 [感想] 著者の作品は幅が広く、どの分野にもヒット作があり受賞も多数。 日本ペンクラブ会長他、幾つかの文学賞の選考委員を歴任しているが、遅咲き の作家で「デビューまで30年近くも売れぬ物…

読書感想〈漫画〉『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由』 『戦争めし』

★『「死ぬくらいなら会社辞めれば」ができない理由(ワケ)』 (汐街コナ、ゆうきゆう) [内容] 汐街氏が過労自殺しかけた時の経験を描いた漫画が書籍化されたもの。 [感想] 著者はプロのイラストレーターだが、この本に登場する人物は皆、まるで幼児 のいた…

読書感想『刑務所のタブー』(窪田順生 他)

[内容] 元受刑者・検事・刑務官・教誨師などによって、犯罪及び刑務所の実態が語ら れている。 [感想] 記事の殆どが受刑者の顔写真付きで、有名事件ばかりを扱っている。下記は その一部で、どれも興味深い内容だった。 ◎新潟少女9年2カ月監禁事件 (佐藤…

読書感想『映画を早送りで観る人たち』(稲田豊史) 

[内容] 主にZ世代の若者へのインタビューを通して、彼らが映画や映像を早送りで観 る理由と、その背景を様々な角度から考察。 [感想] 若者の多くは、映像の倍速視聴・10秒飛ばしが習慣化しており、ネタバレ・レ ビューを読んでから観る人も多い。その理…

読書感想『暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』     (ティモシー・スナイダー)

[内容] 世界大戦前後に台頭した独裁政治国家の歴史に学び、政治の暴走をどのように 阻止すべきかを解説。 [感想] 著者はイエール大学の教授で歴史家。本書はトランプ氏の大統領就任に危機感 を抱いて緊急に出版されたものだそう。 ナチス・ドイツとソビ…

『子どもの貧困連鎖』(保坂渉、池谷孝司)

[内容] 日本の子供の6人に1人が、相対的貧困状態にあるという。本書はその実態を 調査・分析したノンフィクション。 [感想] 極貧家庭の子供は人生のスタート時点で、既に可能性の門戸を閉ざされている ことが多いと言われる。本書に登場する多くの事例と…

読書感想『告発・現代の人身売買』(デイヴィッド・バットストーン)

[内容] 世界中に存在する、強制労働に従事させられている人々の実態に迫るルポ。 副題『奴隷にされる女性と子ども』 [感想] この地球上で最悪の労働形態に囚われている人は、数千万人にも上るという。 本書で扱うのは主に「性産業」「債務労働者」「子供…

読書感想『日本を捨てた男たち』(水谷竹秀)

[内容] フィリピンで、ホームレス同然となって生きる男性達のルポルタージュ。 副題『フィリピンに生きる「困窮邦人」』開高健ノンフィクション賞受賞 [感想] 本書に登場するのは、日本のパブで働いていた女性をフィリピンまで追いか けていった人、暴力…

読書感想『癌にかかった医者の選択』(竹中文良)

[内容] 末期癌にかかった人達の最後の選択と、癌患者及び彼らを看取った人達の 心情が綴られている。副題『残りのいのちは自分で決める』 [感想] 人生の最後の時、殆どの人が病院のお世話になる。その時は主治医に全幅の 信頼を置きながらも、患者として…

読書感想『雇用身分社会』(森岡孝二)

[内容] 以前とは様変わりした日本の雇用形態と、その原因、解決策を考察。 [感想] 「気がつけば日本は雇用身分社会」…これは本当にその通りだと思う。今は コロナ禍も加わって更に修復は難しそうだ。 明治~昭和初期の女工達は、工場主と募集人の契約関…

読書感想『進化論の最前線』(池田清彦)

[内容] ダーウィンからiPS細胞まで、進化論の歴史と矛盾点、及び生物学の最先端 を解説。 [感想] 最近の進化論は、私達が昔学校で習った内容とは大きく変化している。 本書では進化論の様々な仮説とその歴史が紹介されているが、進化は突然変異 や自然選…

読書感想〈漫画〉『五色の船』『式の前日』

★『五色の船』(近藤ようこ) [内容] 自分自身を見世物として生きる、血の繋がらない異形の家族の不思議な物語。 “文化庁メディア芸術祭・漫画部門大賞”を受賞。 [感想] 病気や生まれながらの障害などで、本当の家族とは暮らせなかった5人。 互いを信頼…

読書感想「『反権力』は正義ですか」(飯田浩司)

[内容] 現役のアナウンサーが、メディアに報道のあり方を問いかけた本。 副題『ラジオニュースの現場から』 [感想] 著者は自ら現場で取材もする、ラジオの人気アナウンサー。 本書で取り上げられているのは、権威や権力との向き合い方、基地と自衛隊・ …

読書感想『世界が驚くニッポンのお坊さん佐々井秀嶺、インドに笑う』  (白石あづさ)

[内容] インドの仏教界でトップとなり、老いてなお人々を導く日本人僧侶の波乱 万丈な人生を、著者が現地で行動を共にしながらレポート。 [感想] 佐々井氏(令和4年現在87歳)は、普通のものさしでは測れない破天荒なお坊 さんだ。インドで仏教の復興と不…

読書感想『スマホ脳』(アンデシュ・ハンセン)

[内容] スマホによって若者たちが蝕まれている現状と、その原因・対処法を解説。 [感想] 著者はスウェーデンの精神科医で、本書は世界的ベストセラーとなった。 人間の脳は、狩猟採集民として生きた大昔のまま変わっていない。そのため 急激に普及したSN…

読書感想『瓦礫の中から言葉を』(辺見庸)

[内容] 3.11大震災と原発事故を中心に、災害時のメディアの在り方などを考察。 副題『わたしの<死者>へ』 [感想] 著者は宮城県石巻市の出身で、この本を書いた時はウツを患っていたという。 そのせいかは分からないが、以前読んだ著者の「もの食う人々」と…

読書感想『世直しトークあれこれ』(美輪明宏)

[内容] スポーツ新聞のコラムをまとめたもので、世の中の出来事について幅広く語 られている。 [感想] 著者は歌手・舞台俳優で、著書も多数。 ここに改めて書く必要がないほど、一般的にはその華やかな出で立ちと、 同性愛者・霊能者としての印象の方が…

読書感想『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(岸田奈美)

[内容] ダウン症の弟と車椅子ユーザーの母親、そして今は亡き父親との絆を大切に しながら、自分の夢に邁進し続ける女性のエッセイ。 [感想] 若い身には辛かろうと思うような出来事も、著者の行動力とユーモアのある 文章で、時々涙しながらも最後まで楽…

読書感想(漫画)『僕のジョバンニ』『スキエンティア』

★漫画『僕のジョバンニ』(穂 積) [内容] チェロを通して親友になった少年達の、並外れた才能故の葛藤と成長の物語。 [感想] 鉄雄はまだ小学生だが、チェロが大好きで才能もあった。 ある日鉄雄の家の近くで客船が沈没し、ハーフの少年郁未が救助された。 …

(読書感想)『在日ウイグル人が明かすウイグル・ジェノサイド』       (ムカイダイス)

[内容] 日本在住のウイグル人女性が、中国による祖国への蹂躙を告発。 副題『東トルキスタンの真実』 [感想] 著者は千葉大の非常勤講師。 本の帯に「これは人権問題だけではない。虐殺と搾取を伴う植民地支配であ る。」とある。 本書では、ウイグルへの…

読書感想『危ない法哲学』(住吉正美)

[内容] 国家や法について、古今の哲学者の考えを紹介しながら実例を挙げて考察。 副題『常識に盾突く思考のレッスン』 [感想] 著者は1961年生まれの女性で、大学法学部の教授。 堅苦しい本ではなく、所々にユーモアが散りばめられていて説明も分かり易い。 …

読書感想『お天道様はみてる尾畠春夫のことば』(白石あづさ)

[内容] スーパーボランティア尾畠氏への、3年に及ぶインタビューをまとめた本。 [感想] 尾畠氏は2018年に、捜索隊が3日間探し続けていた2歳の幼児を、僅か20 分で発見して一躍有名になった人。 本書では、明るくユーモアのある氏の壮絶な生い立ちに驚かされ…

読書感想『それをお金で買いますか』(マイケル・サンデル)

[内容] 副題は『市場主義の限界』 この地球上では、ありとあらゆるものが売買の対象となっている。 著者はその事の何が問題なのかを、多くの実例を挙げて深堀解説。 [感想] 今や民間会社が戦争を請け負い、企業や国家間で環境汚染権が売買され、 臓器の売買…

読書感想『負動産時代』(朝日新聞取材班)

[内容] 土地や家が財産ではなく、負債となってしまっている実態をレポート。 副題『マイナス価格となる家と土地』 [感想] 日本では今、所有者不明の土地、迷惑な空き家、スラム化したマンション、 サブリースのトラブル等が増え続けている。 土地の名義…