[内容]
日本の子供の6人に1人が、相対的貧困状態にあるという。本書はその実態を
調査・分析したノンフィクション。
[感想]
極貧家庭の子供は人生のスタート時点で、既に可能性の門戸を閉ざされている
ことが多いと言われる。本書に登場する多くの事例とインタビュー記事を読む
と、貧困は泥沼にハマるように連鎖していくことがよく分かる。
高校に進学させてもらえない子供達が、貧困の連鎖から抜け出す為に必要なの
は、教育権の保障だ。しかし今の制度には多くの問題があるという。
・近年制度化された“高校無償化”の、公費負担対象は授業料だけである。
・生活保護は直近の収入で判断するのに、就学援助制度は前年の年収で決まる。
・統廃合が進んで、定時制高校の数が減ってしまった。
・借金の返済で生活が苦しくとも、一定以上の収入がある場合就学援助は受け
られない。 等々
親が貧困に陥った原因として、事業の失敗、失業、非正規雇用の増加、離婚、
精神疾患など様々なものが挙げられ、母子家庭は貧困率が高いと言われるが、
やはり両親が揃っている世帯の方が圧倒的に多い。
本書には、生活の困窮がどうにもならず、就学援助金を家計に回す親や、娘の
奨学金を生活の足しにしようとする親も登場する。彼らの心の内は分からない
が、子供の気持ちを思うとやるせない。
日本の場合、学歴と収入の相関は欧米ほど極端ではないと言われるが、それで
も学歴の違いによるサラリーマンの年収の違いは歴然としている。
その為多くの若者が、多額の奨学金を借りて進学するようになり、コロナ禍4
年目に入る現在、借金(奨学金)の返済にあえぐ人が増えていると聞く。
現在日本の子供の貧困率は7人に1人と言われ、本書の出版時よりは多少改善
されているように見えるが、内閣府の「令和3年 子供の生活状況調査の分析
報告書」を読むと、改めてこの問題の難しさを考えさせられる。
「貧しくても心の持ちようだと清貧論を持ち出す人がいるが、そんな精神論で
は何も解決しない。」…子供達に関しては、本当に著者の言う通りだと思う。
本書では他にも様々な事例を挙げて、今後の対策を提案している。