[内容]
スーパーボランティア尾畠氏への、3年に及ぶインタビューをまとめた本。
[感想]
尾畠氏は2018年に、捜索隊が3日間探し続けていた2歳の幼児を、僅か20
分で発見して一躍有名になった人。
本書では、明るくユーモアのある氏の壮絶な生い立ちに驚かされ、信念を持
ったボランティア活動のエピソードには心から敬服。豊富なカラー写真も氏
への理解の一助となった。
尾畠氏にとってボランティアは“させていただく”もので、対価・物品・飲食
を求めないのが基本。活動中の衣食住も全て自前だそうだ。
ボランティア活動をしていない時は、月に55,000円の年金で質素に暮らし、
80歳を過ぎた今も健康維持の為に毎朝8㎞を走っているという。
子供時代は飲んだくれの父親から酷い暴力をふるわれ、5年生の時に母親が亡く
なって、その数か月後には兄弟でただ一人農家へ奉公に出されている。
小5から中3までの5年間、学校には合計3カ月半ほどしか行くことが出来ず、
空腹と重労働と孤独の日々を過ごす。見かねた近所の人が野菜をくれたりしたが、
栄養が摂れなかったせいで、19歳で総入れ歯になってしまった。
しかし尾畠氏は当時の事を「お陰で忍耐力・生き抜く力・プラスに考えること
が出来るようになった。」と語る。どうしたらそんな風に達観できるのだろう。
著者は彼を「好奇心の塊のような人」と評し、下山する度に山に丁寧にお辞儀
をし、生きとし生ける全てに感謝するその真摯な姿にも目を見張る。
15歳で魚屋に奉公、29歳で独立して65歳の時に店を閉めて引退。
8年前に、43年間連れ添った奥さんからの申し出で別居しているのだが、
「帰らないでもいいし、帰ってくりゃあ、帰ってきたでいい。」と話す。
やはり常人とは少し違うようだ。
以下に尾畠氏の話の中から、印象深かったものを幾つか抜粋。
◎もうちょっと出来るところでやめるのが、ボランティアを続けるコツ。
◎昔は人の家の柿を採っても「なんぼ採って食ってもいいけ。但し柿の枝
は折れるから気いつけろよ。」って、そういう時代やった。
◎(四国霊場八十八か所の巡礼で)
今まで商売とはいえ、沢山の魚を殺してきたっちゃ。その供養の旅なんよ。
◎先にいた動物を有害っていうのはおかしいでしょ‐(略)‐動物から見たら、私を
含めて人間ほど悪くて最低の動物はいないんよ。
◎苦しい時こそ半歩でも外に出て‐(略)‐外の空気ちゅうのは、全然味が違うんよ。
それにしても、写真の笑顔が可愛い(^^)。