[内容]
スマホによって若者たちが蝕まれている現状と、その原因・対処法を解説。
[感想]
著者はスウェーデンの精神科医で、本書は世界的ベストセラーとなった。
人間の脳は、狩猟採集民として生きた大昔のまま変わっていない。そのため
急激に普及したSNSに正しく対応できず、様々な弊害が起きているという。
若者達はスマホを手放すことが出来ず、統計によると1日に平均4時間は見
ているそうで、これは脳の報酬系がハッキングされてしまうためだとか。
※脳の報酬系 = 欲求が満たされた時や、満たされると分かった時に活性
化し、元気ややる気を引き起こす神経ネットワークのこと。
しかしスマホを過剰に使うと、記憶力・集中力・学力の低下、睡眠障害、
うつ、スマホ依存などが起き、周囲の人にあまり関心が持てなくなるという。
本書ではそれらについて詳細に解説されており、その中から一部を抜粋。
◎脳が自分では覚えようとしない“グーグル効果”と言われる現象が起きる。
◎読書はタブレット端末よりも、紙の書籍で読む方が内容を覚えている。
◎“ながら”で勉強する人は多いが、このようなマルチタスク派は集中する
ことが苦手で、長期記憶能力にも悪影響が出ている。 等々。
この他、心身の健康問題についても多くの頁が割かれている。
驚くのが情報を提供する側のやり方だ。SNSなどの企業の多くは専門家を雇っ
て、いかに効果的に脳の報酬系をハッキングするかを研究し成功をおさめてい
るという。
中でも下記は有名で、多くの人が“うざい”と嫌っている。
『SNSのプッシュ通知やチャットの着信音がどれも似たような音なのは偶然で
はなく、情報の洪水の只中に巧妙に広告を出して購買意欲をくすぐっている。』
次の話はもっと凄くて「こんな事までしてるのか…。」と引いてしまった。
『フェイスブックやインスタグラムは、親指マークやハートマークがつくのを
保留する。そうやって、私たちの報酬系が最高潮に煽られる瞬間を待つのだ。』
IТ企業トップ達は、我が子には十代半ば頃迄こうした機器を与えないか、又
は厳しく制限していたそうだ。スティーブ・ジョブズ然り、ビル・ゲイツ然り。
又、フェイスブック(新社名「メタ」)の「いいね!」の開発者は、「SNSの
依存性の高さはヘロインに匹敵する」と話していたとか。
ではスマホの弊害から身を守るにはどうしたら良いか。
研究の結果それは既に分かっていて、最善の対抗策は散歩やランニングなど
運動をすることだそうだ。運動には各種の衝動を抑える力があり、知能にも
良い効果を与えてくれるという。
とは言え、スマホが便利で重宝する機器であるのは間違いないことで、また
本書に書かれている弊害が誰にでも起きるわけでは無い。
親としてすべき事は、まずは子供に与える時期をよく考え、使い方をきちんと
指導してルールを決める。与えっ放しはNGということだ。