ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『告発・現代の人身売買』(デイヴィッド・バットストーン)

[内容]

世界中に存在する、強制労働に従事させられている人々の実態に迫るルポ。

副題『奴隷にされる女性と子ども』

[感想]

この地球上で最悪の労働形態に囚われている人は、数千万人にも上るという。

本書で扱うのは主に「性産業」「債務労働者」「子供兵士」「ストリートチルド

レン」などで、その殆どが詐欺や誘拐による犠牲者だと言われている。

 

本書ではこれらの詳細な実態と、彼らを救助するために人身売買組織と闘う様

々な非営利組織の活動内容を紹介。救助者を脅す輩の卑劣な手口も暴いている。

 

現代の奴隷取引は、昔と違って人間の数が多く且つ短時間での長距離輸送が

可能なため、相対的なコストが激減。その為犠牲者はすぐに替えのきく、消耗

品扱いをされることが多いそうだ。

 

又、彼らの多くは市民と同じ生活圏内で働いているのに、周囲にはそれと気付

かれていないことが殆どだという。本書を読むに、どのケースからも絶望しか

感じられず、人身売買組織のやり口には、人間というのは法が機能しなければ

ここまで強欲で残酷になれるものなのかと、おぞましくもやるせない。

 

ちなみに強制労働が多い職種は、トップが「売春」で「家内労働」「農業」

「工場労働」「レストラン・ホテル業」と続く。

 

各国の取り組みも紹介されているが、警察など取り締まるべき側が腐れ切って

いて、法はあっても絵に描いた餅でしかない国も少なくないようだ。

 

本書の中で最も強烈なのは、アフリカの反政府軍による“子供兵士”という名の

奴隷だ。人権団体の推定ではこれまでに66,000人もの子供が囚われの身になって

いるという。

 

男たちは誘拐した少年が生き残る為の通過儀礼として、家族や村人の惨殺を

強要。更に悲惨なのは、少年達が成長すると今度は加害者の側に回ることだ。

やっと救助されても、大人になった少年たちの組織への忠誠心と奴隷的思考を

打ち破るのは、困難を極めるという。

 

人身売買業者は、より弱い人々を餌食にするために都合よく世界を移動してい

るそうで、時代や政変によってターゲットがどのように移り変わっていったの

かも、詳しく解説されている。

 

「少年少女達を救い出しても、貧しい失業状態のまま放置するようなプログラム

では成功に繋がらない。その為に彼らを訓練する営利事業を起こして情緒的基盤

と経済的な持続性を与える。」

これはとても大事なことで、実際多くの非営利組織が取り組んでいるが、一筋縄

ではいかない難しさがあるようだ。

 

巻末に“人身売買問題に取り組む日本の主なNGO”が列記されている。