[内容]
日本在住のウイグル人女性が、中国による祖国への蹂躙を告発。
副題『東トルキスタンの真実』
[感想]
著者は千葉大の非常勤講師。
本の帯に「これは人権問題だけではない。虐殺と搾取を伴う植民地支配であ
る。」とある。
本書では、ウイグルへの侵略者たちとの闘いの歴史、著者の幼少時の生活、
その後の中国による弾圧と、土地や資源の略奪が本格化していく様子が克明
に描かれており、当地で育った著者ならではの緊迫感を持った解説が続く。
強制収容所が作られたのは2016年からで、東トルキスタン全土に1000以上
存在し、最初に収容所に入れられたのは、ウイグルの文化や社会を担う知識
人と宗教的指導者や経済的に豊かな人達だったという。
現在もウイグルの人口の3割を超える人々が拘束されているとみられ、以下は
収容所にいた人の証言によって得られた、収容所の実態の一部だ。
『洗脳と思想教育が行われ、ウイグル語は禁止。強制労働と拷問。
AIなどによる徹底した監視。女性へのレイプと避妊薬及び避妊手術の強制。
衛生状態・食事は最悪で、人々は弱り、病気で死ぬ人が後を絶たない。』
収容所の外でも町全体と居住空間に監視カメラが設置され、行われている事
は収容所と大差ないとか。
私は、中国が弾圧を強めたのはウイグル自治区での爆破テロ事件がキッカケ、
という程度の知識しか持たなかったが、著者は「中国の弾圧は東トルキスタン
(新疆ウイグル自治区)が中国の存続の鍵をにぎる『一帯一路』の出入り口だか
らである」と断言。 強い怒りを持ってこう訴える。
「中国共産党の狡猾さ、したたかさを予想できなかった祖先を恨むが、国を
容易く侵略者に渡してしまった我が民族の愚かさと責任を、私たちは今後
追及しなければならない。」
近未来の日本が、ウイグルと似たような状況に陥っていなければよいが。
ネットを検索すると、ウイグルの強制労働によって作られた製品に関わっ
ている日本企業の名前がズラッと出てくる。
彼らがウイグルの人権侵害についてどの程度自覚しているかは知らないが、
そのような利益最優先の企業から物を買いたくはないと考える人は少なく
ない。