ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『負動産時代』(朝日新聞取材班)

[内容]

土地や家が財産ではなく、負債となってしまっている実態をレポート。

副題『マイナス価格となる家と土地』

[感想]

日本では今、所有者不明の土地、迷惑な空き家、スラム化したマンション、

サブリースのトラブル等が増え続けている。

 

土地の名義人が亡くなった時、相続登記をせずに放置していると子や孫の代に

相続人が増えていき、その土地は売ることも誰かが相続することも出来ない

“塩漬け”状態になる。

 

このような相続登記のされていない土地や、名義人と連絡出来なくなった所有

者不明土地は日本中至る所にあり、その規模は九州より広いというから驚きだ。

 

民法には「所有者のいない不動産は、国庫に帰属する。」という規定があるが、

国や自治体への寄付を希望しても、維持管理に費用が掛かる為受け付けてくれ

ないことが殆どだという。しかも相続登記は義務ではない上に、土地を捨てる

ための法律も定められていないため、相続者にとっても国にとっても頭の痛い

問題となっている。

 

そんな中、最近になってようやく土地政策の抜本見直しの動きがあり、国庫

帰属を事実上拒否していた財務省が、2017年に方針を転換。

法務省有識者による「登記制度・土地所有権の在り方等に関する研究会」を

立ち上げ、土地を放棄できる仕組みの検討が始まった。

しかし土地の評価額の元になる公図には不正確なものが多いそうで、解決への

道のりは険しそうだ。

 

アパート経営の2割が赤字だと言われている。本書ではその中でも特に、レオ

パレスのサブリースの検証に頁を割いている。

※サブリース契約=オーナーが建てたアパートを不動産会社が一括で借り上げ、

         入居者にまた貸しすること。

 

サブリースの場合、家賃保証期間が過ぎた後は家賃を引き下げられることも

多く、その為に借金苦に陥る人たちもいるとか。呉々もセールストーク

鵜呑みにしないようにと、警戒を促している。

 

マンションの購入に関しては、一軒家と違って維持管理費・修繕積立金

ずっと家計の負担になり続けることと、老朽化したマンションには建替え

問題・相続問題が発生することを指摘。トラブルの具体例を挙げて、詳しく

解説している。

 

本書後半では、仏・米・独国の柔軟な対応が紹介されており、そちらも興味

深い内容で面白かった。

 

本書の出版(2019)後に進展があり、ネットにこんな記事がありました。

「昨年(2021)の閣議決定により、2024.4.1に相続登記義務化の法律が施行

 される予定で、相続土地の所有権を国に手放すことも可能となります。」

       (詳細を知りたい方は法務省のホームページをご覧ください)