★『五色の船』(近藤ようこ)
[内容]
自分自身を見世物として生きる、血の繋がらない異形の家族の不思議な物語。
“文化庁メディア芸術祭・漫画部門大賞”を受賞。
[感想]
病気や生まれながらの障害などで、本当の家族とは暮らせなかった5人。
互いを信頼し助け合って生きているが、どこか浮世離れした暮らしだ。
戦争や貧困もあって、背景にずっと物悲しさが漂っているが、“あちらの世界”
で別人のように生き生きと逞しく生きる様は、想像を超えた展開だった。
彼らをそこに導いた、特殊能力を持つ“くだん”の正体が胸に刺さる。
★『式の前日』(穂積)
[内容]
全部で7話からなる、様々な“2人きり”の情景を描いた心に染みる短編集。
デビュー作にして幾つかの賞を受賞。
[感想]
どの話も少し不思議な雰囲気で、「どういう事だろう?」と想いながら読み進み、
「あ、そういうことだったのか…。」と、最後にじんわりと温かさが染みてくる。
以下に2話分だけ内容を少し。
第1話『式の前日』
弟が11才の時に両親が事故死したため、8つ違いの姉が親代わりとなって彼を
育てて来た。明日はその姉の結婚式で、2人はいつものように屈託のない会話
を交わしていたが、夜になって何故か姉が布団の中で泣いている。
第2話『あずさ2号で再会』
「タバコを買ってくる」と言って家を出、そのまま帰って来なかった若い父親。
彼は年に一度、娘にだけ会いに来るのだが…。
良い話ばかりで、読み終えた直後にもう一度最初から読み返してしまった。