[内容]
世界大戦前後に台頭した独裁政治国家の歴史に学び、政治の暴走をどのように
阻止すべきかを解説。
[感想]
著者はイエール大学の教授で歴史家。本書はトランプ氏の大統領就任に危機感
を抱いて緊急に出版されたものだそう。
ナチス・ドイツとソビエト連邦が行った大量虐殺の背景、更に現在進行形中の
トランプ(元)大統領とプーチン大統領の危うさを解説しながら、国民が実行す
べき20の予防策が示されている。
僅か124頁の短い本の中に大事な事が簡潔にまとめられており、目次の其々の
タイトルで“20の予防策”のテーマが分かるようになっている。
国を挙げての虐殺に際して、かつて一般市民はどのような行動をとったのか。
多くの実例を読みながら「人は重大な危機に直面すると、こんなにも愚かで卑怯
になるものなのか。私もこうなってしまうのか?」と、深い溜息が出た。
危険を顧みず救済の手を差し伸べた人達も大勢いて、それが救いだが。
以下は20の予防策の一部と解説。
NO.1「忖度による服従はするな」…ドイツ国内のみならず、他国でも大勢のユ
ダヤ人が殺され財産を盗まれたが、一般市民の多くがそれに加担していた。
NO.5「職業倫理を忘れるな」…仮に法曹家・医師・実業家などが実行を拒んで
いたら、ナチス体制は苦境に陥っていた筈。
NO.7「武器を携行するに際しては思慮深くあれ」…警察官や正規軍兵士の支援
なくしては、大規模な殺戮が出来た筈はない。
巻末の国末憲人氏による解説も、興味深い内容だった。
「ホロコーストの犠牲者の97%が当時のドイツ以外におり、その主舞台がウク
ライナと隣のポーランドである。」
「世界秩序の枠組みを構成するロシア、中国、さらには米国といった大国さえも
ふとしたきっかけから大虐殺に突き進む。そのような可能性を教授は警告して
いる。」 等々。
本書の紹介はここまでにしておくが、お勧めの1冊です。