ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『暴政:20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン』     (ティモシー・スナイダー)

[内容]

世界大戦前後に台頭した独裁政治国家の歴史に学び、政治の暴走をどのように

阻止すべきかを解説。

[感想]

著者はイエール大学の教授で歴史家。本書はトランプ氏の大統領就任に危機感

を抱いて緊急に出版されたものだそう。

 

ナチス・ドイツソビエト連邦が行った大量虐殺の背景、更に現在進行形中の

トランプ(元)大統領とプーチン大統領の危うさを解説しながら、国民が実行す

べき20の予防策が示されている。

 

僅か124頁の短い本の中に大事な事が簡潔にまとめられており、目次の其々の

タイトルで“20の予防策”のテーマが分かるようになっている。

 

国を挙げての虐殺に際して、かつて一般市民はどのような行動をとったのか。

多くの実例を読みながら「人は重大な危機に直面すると、こんなにも愚かで卑怯

になるものなのか。私もこうなってしまうのか?」と、深い溜息が出た。

危険を顧みず救済の手を差し伸べた人達も大勢いて、それが救いだが。

 

以下は20の予防策の一部と解説。

NO.1「忖度による服従はするな」…ドイツ国内のみならず、他国でも大勢のユ

   ダヤ人が殺され財産を盗まれたが、一般市民の多くがそれに加担していた。

NO.5「職業倫理を忘れるな」…仮に法曹家・医師・実業家などが実行を拒んで

   いたら、ナチス体制は苦境に陥っていた筈。                 

NO.7「武器を携行するに際しては思慮深くあれ」…警察官や正規軍兵士の支援

   なくしては、大規模な殺戮が出来た筈はない。

 

巻末の国末憲人氏による解説も、興味深い内容だった。

ホロコーストの犠牲者の97%が当時のドイツ以外におり、その主舞台がウク

 ライナと隣のポーランドである。」

「世界秩序の枠組みを構成するロシア、中国、さらには米国といった大国さえも

 ふとしたきっかけから大虐殺に突き進む。そのような可能性を教授は警告して

 いる。」 等々。

本書の紹介はここまでにしておくが、お勧めの1冊です。