ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『癌にかかった医者の選択』(竹中文良)

[内容]

末期癌にかかった人達の最後の選択と、癌患者及び彼らを看取った人達の

心情が綴られている。副題『残りのいのちは自分で決める』

[感想]

人生の最後の時、殆どの人が病院のお世話になる。その時は主治医に全幅の

信頼を置きながらも、患者として最低限譲れない気持ちは尊重してほしいと思

っている。しかし現実は、病院や医者の都合を優先されて涙をのむ人も多い。

 

著者は外科医で自身も大腸癌を患ったことがあるため、医者としての立場だけ

ではなく患者視点での解説が心に響く。

 

「1年程で確実に死ねる癌は、ある程度年齢を重ねた人にとっては歓迎すべ

き死と感じられるかも知れない。」…この世にはどれ程辛い病があるのだろう

かと思わせられる言葉で、私などは最後迄こんな風に達観は出来そうにない。

 

『読者からの12通の手紙』…この章では癌患者の様々なケースが紹介されて

おり、副題の「残りのいのちは自分で決める」の意味について考えさせられた。

 

手紙の中に「今後、再発、転移が起こっても手術を受ける気はしません。」と

書いている人がいた。理由は、自身の入院中に沢山の患者を見てきたが、抗癌

剤を受けても完治した人は無く、皆亡くなってしまったからだという。

 

「せっかく苦しまないできた人を、最後に医者の学問的な興味としか考えよう

 のない検査で苦しめてしまい、残念でたまりませんでした。」

これは夫を亡くした女性の言葉だが、私も以前同じような体験をした知人から、

医者に対する不信感と悔しい気持ちを聞かされたことがある。もしかしたら、

この手の話は珍しくないのかも知れない。

 

以下に、医者の人間性や倫理観について考えさせられた話を2つ抜粋。

「結果として残るのは、医学論理を正しく遂行しようとする医者が医学的な興

 味も加わって、運命を拒否して闘いを希望する患者に対して展開するイケイ

ケ医療である。」

「優しさや思いやりは教育よりも生来生まれ持った部分が大きい‐(略)‐そう

 いう人を医者として育てる。」

 

30~40代の医者は殆どが癌との闘いを選択し、50代を過ぎると半分は自然に

任せる選択をするという。ならば私は、最期の時は年配の医者にゆだねたい。