20年前のある夜のこと。テレビを見ていたら突然片方の鼻から、鉛筆の芯より
少し細いくらいの鼻血がス~ッと流れ出てきて、何をどうしても止まらない。
2時間様子を見たが、これはおかしいという事で夜間救急の当番病院に連れて行
ってもらった。そこで血圧を計ったところ190もあったため、血圧を下げる注射
の後、すぐに医者から言われた指定の総合病院に向かった。
ところが、30分後に病院に着いて診察台に横になった途端に、気が遠くなった。
医者が「〇〇さ~ん」と私の名を呼びながら何度か私の頬を叩き、看護師さんが
「血圧50」とか言っているのが聞こえた。
どうやら先程の病院での注射が強過ぎたらしい。幸い適切な処置をしてもらって
意識が戻り、一晩入院しただけで家に帰ることが出来たが、動脈硬化も進んでい
るということで、この日から近所の内科で降圧剤をもらうことになった。
しかし時々、この薬の服用に迷うことがある。真夏は薬を飲まなくとも理想血圧
まで下がることがあり、逆に冬の寒い時期には薬を飲んでいても170前後まで
上がることも多い。
高齢者の血圧は140‐90を超えたら要注意と言われるが、本来老人の血圧は少し
高めで、しかも降圧目標は以前より低く設定されている。
その後脳梗塞を発症したこともあって、現在私は1日に4種類の薬を服用している
のだが、ここ何年か体調を崩すことが多くなった。
それは加齢のせいだけではなく、何年も同じ薬を飲み続けていることも関係してい
るのでは?と思い、調べてみたところ「高齢者は生理機能が低下しているので
若い頃と比べて副作用が出やすくなることがある。」と書かれていた。
しかし又脳梗塞を起こすのが心配なのと、胃食道逆流症の薬などは飲み忘れると
すぐに症状が出ることもあり、今すぐ薬をやめる勇気は無い。
よく「薬を飲み忘れるのは元気な証拠」などと言われるが、こうしてみると老人が
時々薬を飲み忘れることがあるのは、老化による不注意だけではなく、案外無意識
に不安の気持ちが作用していることがあるのかも知れない。