ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『瓦礫の中から言葉を』(辺見庸)

 [内容]

3.11大震災と原発事故を中心に、災害時のメディアの在り方などを考察。

副題『わたしの<死者>へ』

[感想]

著者は宮城県石巻市の出身で、この本を書いた時はウツを患っていたという。

そのせいかは分からないが、以前読んだ著者の「もの食う人々」と違い、途中

何度もつっかえながら読んだ。

※「もの食う人々」= 講談社のノンフィクション賞を受賞。お勧めの1冊です。

 

本書のテーマとして「言葉と言葉の間に屍がある」「人間存在というものの

根源的な無責任さ」の2つが挙げられている。

何だか難しい表現で私にはよく理解できないが、本書に書かれていることの

多くは共感できる内容で、原発事故の時のマスメディアの姿勢の空々しさや、

ACジャパンのCМについての辛口な考察も面白かった。

 

「膨張する一方の投機マネーは、じつのところ戦争を待ちのぞんでいやしな

いか。」…この言葉で、昨年亡くなった経済評論家の内橋克人氏が、ヘッジフ

ァンドが台頭し始めた時に彼らのことを“経済界のならず者”と評していたの

を思い出した。その後の動向を見ると、中には戦争を待ち望む人がいても

不思議はない気がする。

大きな天災が起きると、それを天罰だという人がいる。それに対して著者は

「これは天罰でも天恵でも有り得ない-(略)-死者たちへの礼にも欠けます。」

とバッサリ。

 

天罰派は又「神の心は計り知れない」「彼らは死後に救われている」などと

言うが、罪の無い人々を罰して殺すのが“神”である筈が無く、そのような

考え方は著者が言うように犠牲者への冒涜だろう。

 

本書を読んだ後に、著者のブログを読んでみた。

記事が短くて読みやすいのと、ピリ辛な内容が多い中で飼い犬に対する思い

もさりげなく書かれるなど、著者の人柄の感じられる面白いブログだった。