[内容]
3.11大震災と原発事故を中心に、災害時のメディアの在り方などを考察。
副題『わたしの<死者>へ』
[感想]
著者は宮城県石巻市の出身で、この本を書いた時はウツを患っていたという。
そのせいかは分からないが、以前読んだ著者の「もの食う人々」と違い、途中
何度もつっかえながら読んだ。
※「もの食う人々」= 講談社のノンフィクション賞を受賞。お勧めの1冊です。
本書のテーマとして「言葉と言葉の間に屍がある」「人間存在というものの
根源的な無責任さ」の2つが挙げられている。
何だか難しい表現で私にはよく理解できないが、本書に書かれていることの
多くは共感できる内容で、原発事故の時のマスメディアの姿勢の空々しさや、
ACジャパンのCМについての辛口な考察も面白かった。
「膨張する一方の投機マネーは、じつのところ戦争を待ちのぞんでいやしな
いか。」…この言葉で、昨年亡くなった経済評論家の内橋克人氏が、ヘッジフ
ァンドが台頭し始めた時に彼らのことを“経済界のならず者”と評していたの
を思い出した。その後の動向を見ると、中には戦争を待ち望む人がいても
不思議はない気がする。
大きな天災が起きると、それを天罰だという人がいる。それに対して著者は
「これは天罰でも天恵でも有り得ない-(略)-死者たちへの礼にも欠けます。」
とバッサリ。
天罰派は又「神の心は計り知れない」「彼らは死後に救われている」などと
言うが、罪の無い人々を罰して殺すのが“神”である筈が無く、そのような
考え方は著者が言うように犠牲者への冒涜だろう。
本書を読んだ後に、著者のブログを読んでみた。
記事が短くて読みやすいのと、ピリ辛な内容が多い中で飼い犬に対する思い
もさりげなく書かれるなど、著者の人柄の感じられる面白いブログだった。