[内容]
ダーウィンからiPS細胞まで、進化論の歴史と矛盾点、及び生物学の最先端
を解説。
[感想]
最近の進化論は、私達が昔学校で習った内容とは大きく変化している。
本書では進化論の様々な仮説とその歴史が紹介されているが、進化は突然変異
や自然選択の原理だけでは到底説明できないほど複雑だという。
本書は入門レベルということで分かり易く書かれており、専門知識の無い私は
字面を追うだけの箇所も結構有ったが、興味深く読むことが出来た。
ちなみに著者自身は“構造主義進化論”というのを提唱していて、
「同じ遺伝子が発現する場合でも、細胞の環境によって遺伝が発動する機能に
変化が生じてくる。更にエピジェネティクスによって制御された状態は、
場合によって遺伝する。」と解説。
※エピジェネティクス = DNAの塩基配列を変えずに、遺伝子の発現を制御
するシステムのこと。
私が特に面白く読んだ一つに、「遺伝子改変技術」というのがある。正しく理解
している自信が無いので、ここで内容を紹介するのは割愛し、図解が分かり易
くて良かったとだけ…^^;。
最近「外来生物による遺伝子汚染」という言葉をよく耳にする。以前和歌山県
で混血猿達が殺処分されるという痛ましい出来事があったが、その理由と処置
に異議を唱える人も多く、そもそも混血の動物に対して“遺伝子汚染”とは何と
恐ろしい考え方なのかと思う。
その点著者は「長い目で見ると、在来種・外来種といった区別はそれほど重要
ではない。」と言っており、そちら解説のほうがずっと説得力があった。
ES細胞・STAP細胞・iPS細胞についての問題点も取り上げられている。
iPS細胞では山中教授がノーベル賞を受賞。世界中が実用化に期待しているが、
私は最近ネットで、山中教授が理事を務める『iPS財団』が寄付を募る広告を
よく目にするのが気になる。
日本は研究開発に投資をしない国などと言われるが、iPS細胞に限らず研究者
たちの多くは非正規雇用だそうで、このままでは外国への頭脳流出は止まらな
いと心配する声は多い。
本書ではその他にも、「ダーウィンとファーブルは、考え方は違うが信頼したお
付き合いをしていた。」など、面白いエピソードも色々紹介されている。