ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『健康格差』(NHKスペシャル取材班)

[内容]

健康格差が生じる原因と、それを解消する為の様々な方法と国内外の取組み

を紹介している。 副題は『あなたの寿命は社会が決める』

[感想]

本書はNHKで放送された番組の内容を中心に、取材を加えて執筆されたも

ので、人が病気にかかる確率や寿命について様々な角度から検証。

 

糖尿病、高血圧、肥満などは生活習慣病と言われ、これらは長い間自己管理

能力の低さが原因とされてきた。しかし実際はそんな単純な問題ではなく

WHOは健康格差を生み出す要因として「所得、地域、雇用形態、家族構成」

の4つを挙げている。

 

下記は日本国内で健康格差の内容を調査した、その結果の一部だ。

低所得者は、精神疾患で3.4倍、肥満・脳卒中で1.5倍リスクが高い。

・非正規雇用者が、正社員より糖尿病網膜症を悪化させる割合は1.5倍。

・未婚の高齢男性は、様々な原因での死亡リスクが高い。 

 

日本の医療介護行政は急速な高齢化で財政的に逼迫した状態にあり、介護

サービスの質もどんどん低下。介護格差が健康格差に直結している。

又高度医療が受けられる拠点病院は都市部に集中している為、医療格差により

地域の健康格差が更に拡大している。

 

健康格差を解消する対策として、特定の人にだけ施策を投じるのでは効果が

限定的なため、近年世界的に“全体を対象”とする取り組みがなされている。

本書では色々な国のやり方が紹介されているが、中でもイギリスの思い切っ

たやり方と成功には目を見張った。以下の2つはその内容の一部。

 

・ジャンクフードのテレビCМを規制。

・塩分摂取量を減らすことに取り組み、特に国内のパン製造業者に減塩を強

  く働きかけて成功。8年間で心疾患と脳卒中の死亡者が4割も減少した。

 

健康格差の放置は医療費や介護費の増大につながり、国民皆保険制度の日本で

もこのことは深刻な問題となっている。

この健康格差を解消できれば、10年間で5兆円の社会保障費を削減が出来ると

試算されているそうで、日本国内でも例えば高齢者のために病院自らが地域に

出向くなど、自治体ごとに様々な取り組みが行われている。

 

尚、高齢者は歯を見ればその人の置かれている状況が一目で分かるそうで、

子供の場合は、生活困難世帯の子はそれ以外の世帯に比べて虫歯が5本以上

ある割合が2倍、しかも肥満傾向にあるとか。

 

歯の状態が悪いと体調を崩すことにつながるので、子供や身の回りの事が出来

ない病人の歯磨きには、特に気を付けてあげる必要がありそうだ。