[内容]
台湾の複雑な政治情勢、歴史、国民性、中国や日本との関係、及び台湾有事につ
いての解説と考察。
[感想]
著者はジャーナリストで、元朝日新聞台北支局長。台湾での出版も多数。
表紙の「隣国を基礎から理解する」の言葉通り、分かり易い解説だった。
台湾の正式名称は中華民国。九州とほぼ同じ面積の島国で、人口は約2,330万人。
かつはて国連に加盟していたが、1971年の総会で、中国の代表権は中華人民共和
国にあるとして追放され、今も“未承認国家”としての立場を余儀なくされている。
台湾に住む人々は殆どが漢民族だが、民族構成は多様で16の先住民族(2.5%)が暮
らしており、公用語の他にも様々な言語が使われているという。
17世紀頃から幾つかの勢力の支配下に置かれ続け、スペイン、オランダ、中華王
朝(明・清)、そして1895~1945年の50年間は大日本帝国が占領統治。その後は
毛沢東との内戦に敗れて台湾に撤退した蒋介石政権の支配下にあった。
日本による占領は、日清戦争後に清朝から割譲されたことで始まり、第二次世界
大戦での日本の降伏によって終了している。しかし中国や韓国とは違って台湾は
“親日”だと言われており、本当だろうかと思っていたが、台湾の人達は国民党を
「犬が去って豚が来た。」と言って嫌悪したという説明で、ちょっと納得。
※日本(犬)は高圧的ではあったが、法を無視することはなく、インフラを整備し
教育制度を確立した。しかし蒋介石政権である国民党(豚)は、日本以上に高圧的
で、役人による汚職と兵士による強奪が横行した。
著者はまた、日本と台湾は貿易のパートナーであり、共に“国家の安全保障におい
てアメリカの庇護が重要で、中国の盾として利用されている”…と解説している。
ちなみに蔣介石の息子の蔣経国は、38年間続いた戒厳令を解除。国民生活の向上
に向けた投資を行って現代台湾の素地を作った人で、その貢献を認められている。
その後台湾は、半導体受託製造企業として世界のトップであるTSMCを始め、驚
異的な経済発展を遂げた。
台湾では現在、国民党(=親中)と民進党(=反中)の二大政党制が定着。総統は4年
ごとに直接選挙で選ばれ、この2つの政治方針はかなり異なるため投票率は高い。
民主化により自分達は“台湾人”という意識が強まり、中国の“一国二制度”がまや
かしであることは香港で証明されているので、中国に併合されることを望む人
は殆どいないという。しかし中国と台湾の経済関係は太いものがあるため、“衝
突を避けて現状を維持する”ことを望む人が増えているそうだ。
台湾有事に関して著者は、「日本人の多くは中国の“台湾統一”を領土拡大の野心
と受け止めているが、それは的外れだ。」と言う。“一つの中国論”は中国共産党
にとっては、政策や理想ではなく “ドグマ”(絶対曲げない原則) なのだとか。
今後については「台湾有事は100%ないとは言えないが、短期の武力侵攻はない。」
と推測。中国と台湾はいまだに内戦状態にあり、現状自体が“有事”であるとも。
そして、最悪の状態を回避するためにも、日本は中国に「台湾に万が一何かあった
時には、日本は座視をしないという可能性を見せることです。」と明言している。
本書では他にも、近代の出来事、台湾の観光他、台湾の歴史を知る為の書籍・映画
の紹介など、参考になる事が色々書かれている。
※つい先日中国の外相が欧州で、「日本に台湾侵攻の意図がある。」というトンデモ
発言をして、茂木大臣が反論したという報道があった。…きな臭さが増している。