[内容]
不利な条件でも働かざるを得ない人達の本音を聞いたインタビュー集。
副題『底辺労働にあえぐ34人の素顔』
[感想]
登場するのは派遣社員やシングルマザーなど、雇用形態も立場も様々な人達で、
中には正社員もいる。
要らない服を買わされるアパレル社員。
正規登用ありとなっていても、実際は2~3年でお役御免の派遣社員や派遣教師。
ギフト商品や年賀はがきのノルマがキツい、郵便局の非正規社員。
公務員と思われているが、実は非正規の図書館員。 等々
中には「どこが底辺?」と思われるものもあったが、全員に共通してるのは身分
が不安定で収入が低く、雇う側に都合よく使われている点だ。
「正社員のリストラは時間とお金がかかるが、派遣や契約社員は簡単に調整でき
ますからね。」と、平然と語る会社側の発言があったが、どこもこれが本音だろう。
対して雇われる側は、「収入格差は生き方格差」「新卒の時にまともな会社に就職
できなかったら修正は困難」「奨学金返済が重すぎる」という厳しい現実に喘いで
いる。「こんな給料じゃ生活していけない」と言って事件を起こした人間のことを、 「あの犯人の気持ちも分かる」と言った人の言葉が胸に痛い。
世間には、極貧や望まない孤独に落ちていく人達に「自己責任だ」「努力が足りな
い」と言う人がいる。確かに本人に問題がある場合もあるが、誰をも一緒くたにし
て決めつける人の多くは、自分が恵まれていたことに気付いていない気がする。
このご時世、失業は他人事ではなく、日本の経済はどうなるのかと皆心配している。
マイナスの網に引っかかって頑張っても駄目な時は、“自己責任”という言葉で自分
を縛らず、周りの人や福祉に相談することを考えた方がいいと思う。