ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

経済的に困窮する母子家庭  

中学の同級生に、明るい性格だが少しオキャンな感じの女の子がいた。

20代前半の時、その子が突然生命保険の勧誘で実家に来たので驚いた。

 

以前見かけた時は少し派手な印象だったが、いま目の前にいる彼女は、

シミのついたスカートに背中には赤ん坊。

私はその変わりように驚いて、取り敢えず家に上がってもらった。

そしてお喋りの後に、失礼かとは思ったが私の服を何枚かあげた。オシャレ

だった彼女が、私のお下がりを素直に喜ぶ姿に少し胸が痛んだ。

 

彼女の夫はずっと無職だという。事情があって働けないというわけではなく、

どうやらただの“ろくでなし”のようだ。

「でも舌が肥えてる人だから、食費がかかるんだ~。」と笑った彼女の口は、

前歯が1本無かった。

 

夫がいつまでも働かない時、妻は人から正反対のことを言われることがある。

「頑張れと言って追い詰めてはいけない。」

「ダラダラと無職を許している奥さんも悪い。」

 

「追い詰めるな」に関しては、無為徒食の人間ほどズルズルと甘える傾向が

あるので、病気なのかただの怠けなのか、そこはきちんと見定める必要がある。

「無職を許す女房」に関しては、許すも何も妻は働かない夫に頭を抱えている

ことが殆どだ。夫は大のオトナなのだから、妻が責められるいわれはない。

 

同級生が実家に来てから数年後、人伝に彼女が離婚したと聞いた。その後

暫く子供を母親に預けて、ホステスとして働いて仕送りをしていたという。

 

50年も昔の話で、当時は母子家庭への福祉はあまり行き届いていなかった。

それに比べて今はずっと恵まれている。加えて、女性の働く場も広がり、昨今

はしっかり働いて平均以上に稼いでいるシングルマザーも少なくない。

それなのに、今又経済的に困窮する母子家庭が増えているという。

 

父親が養育費を払わない、コロナ禍、など理由は色々あるが、ワンオペが当

たり前の母子家庭は母親が働く時間が限られてしまうこともあり、非正規雇

用・低賃金でしか雇ってもらえないことが多いためだ。

 

学生のバイトや家庭を優先したい主婦の短時間パートなど、敢えてそれを選

んでいる人達もいるので、非正規という雇用形態が一概に悪いわけでは無い。

しかしシングルマザーに限らず“不本意正規雇用者”と言われる人達は、

好きこのんで非正規を選んでいるわけではない。

 

先日「2021年度の企業の内部留保が500兆円を超え、過去最高を更新した。」

という報道があった(金融・保険業をのぞく)。

しかし、それを非正規の給与の改善に反映させる企業は殆ど無いという。

 

内部留保は会社の安定の為に大切なものであり、内部留保=現金ではないと

いうことは承知している。しかし、留保金の一部を非正規雇用者の賃金アッ

プにまわしても殆んど影響は無いと言われ、又、行き過ぎた人件費の削減に

よる企業のデメリットも指摘されているのに、経営側は一体いつ迄この差別

化を続けるつもりなのだろう。

 

ところで、不本意正規雇用者のことを「努力が足りない」「全て自己責任」

と批判する向きがあるが、そこに至った経緯は人によって様々だ。何をもっ

てそんな風に決めつけるのだろうと思う。