[内容]
エリート街道を突き進んでいた女性が、フェミニズムに目覚める迄の心の軌跡を
綴ったノンフィクション。副題『おじさん社会と女子の一生』
[感想]
大学卒業後 大手広告代理店に就職した著者は、社員の殆どが男性という世界で
毎日深夜・休日まで男性に伍して働く自他共に認めるバリキャリだった。
しかし30手前の頃に同僚男性から、「女性の独り身は惨めだよ」などと言われるよ
うになり、自身もいつの間にか “結婚して子供を産むのが真っ当な人間の進む正
解ルート” と思い込んでいて、30万円を払って結婚相談所に入会。
しかし何度かの見合いや恋愛も、高学歴・高所得・仕事での成功がアダとなってう
まくいかない。この辺りのことも赤裸々に書かれているが、実際ネットを見ると著
者と同じような気持ちで結婚を考えるキャリア女性は少なくないようだ。
2016年に電通の新入社員高橋まつりさんが、パワハラと過労で自殺したことが大
きなニュースとなり、この一件から広告業界の労働環境は大きく改善されたという。
著者は彼女のTwitterのアカウントを読んで自分と同じだと衝撃を受け、こう書い
ている。「女性として日常的に上司にバカにされ、男性より圧倒的に下の存在であ
ることを自覚しながら、そこに長時間労働が組み合わさったときに、人はどれだけ
自尊心を削られるのだろう。」
※高橋まつりさんのTwitterは、今もそのまま残されていて読むことが出来る。
翌2017年には世界的に、セクハラや性犯罪被害の体験を告白・共有する「#MeToo」
のムーブメントが起きたが、著者はこの時はまだ、他人事としか捉えていなかった。
しかも婚活の失敗と、男性社員との格差などで仕事にも情熱を無くしていき、時々
「生きていてごめんなさい」という言葉が頭に浮かぶように…。
そんなどん詰まりの時に、世界の進んだクリエイティブに学ぶためと人生の小休止
のために、ヨーロッパのF国の会社にインターンとして短期滞在することになり、
そこで人生が大きく変わる。
まず働き方が日本とは全く違った。無駄に長時間会社に縛られることは無く、其々
の関係がとてもフラットで、それでいてクオリティの高いプロジェクトが仕上がっ
ていく。又、結婚・出産というキャリアを積んでいないと、欠陥品というレッテル
を貼られるのだと恐れていたが、それが間違いだったことに気付く。
フェミニズムを目の当たりにし深く学ぶことで、生きづらさの理由にも気付いた。
「しゃかりきに働いても、男には差を付けられ女子力をつけろと言われる。日本社
会が生きづらいのは、男仕様に作られているから。」……ぜんぶ運命だったんかい。
この後本書では、1986年の男女雇用機会均等法や2015年の派遣法改正の影響につ
いてと、バブル崩壊、リーマンショック、非正規雇用などで女性(若い男性も)の雇
用がどれ程不安定になったかなどが詳細に解説されていく。
当時(2018年)の日本のジェンダーギャップ指数は110位。先進国の中では最下位だ
そうで、著者はギャップ指数で女性の落とされる崖が分かるという。
DVの崖、子育ての崖、お金の崖、性犯罪の崖、アダルトコンテンツの崖 等々。
そして、自分が落とされたのは高学歴バリキャリという崖だったと判断している。
著者は2020年、Twitterに「#検察庁法改正案に抗議します」と投稿して、500万を
超すツイートを生み出し “Twitterトレンド大賞2020” の2位に選ばれている。
投稿と入賞迄の経緯も詳しく書かれていて、そちらも興味深い内容だった。
ラストの「声を上げてみたくなったら」で、著者が試してみた “個人が自分の気持
ちを社会に反映する方法” が2ページにわたって紹介されている。