[内容]
職場の事情で都合良く使い回されている非正規教員たちの実状と、その問題点を
明かして改善策を提言。 副題『使い捨てられる教師たちの知られざる実態』
[感想]
著者は教育ジャーナリスト。
現在非正規教員は全国に10万人以上もおり、全体の2割に迫ろうとしている。
正規教員とほぼ同じ仕事内容で、学級担任を務めている人達も沢山いて、子供達か
ら見たら皆同じ“先生”だ。
だが彼らの雇用は不安定で、賃金も正規教員よりずっと安い。また担任を受け持っ
ても正規教員のように、1年目の研修を受けさせてもらえないという。
そもそも彼らは大学で教員免許状を取得しており、能力的には正規教員に何ら劣る
ところは無い筈。それなのに何故こんな事が起きているのか。彼らが正規教員の採
用試験に受からないのは、本当に自己責任なのか。
本書前半は、現場の実態とエピソード・非正規教員の生の声が取り上げられており、
第4章「なぜ自治体は非正規教員の採用を増やしてきたのか」では、自治体が非正
規を大量に増やしてきた経緯と、その原因が深堀りされている。
結論から言うと、非正規教員問題の根っこにあるのは自治体の財政的な問題だ。
以下の3つは、地方の財政に大きな影響を与えた制度改革の代表的なもの。
『義務標準法』改正(2001年)
正規教員の代わりに非正規を採用した場合も、給与の一部は国が負担してくれ
ることになり、結果としてこの“定数崩し”が非正規を増やすことになった。
『三位一体改革』(2004~06年)
それまで公立学校教員の給料は、2分の1は国が負担していたのが3分の1に減ら
された。結果、自治体は教員の給与を抑制し、いざという時の調整弁となる非
正規教員を増やすことに。
『総額裁量制』(2004年)
各都道府県が、教員給与の総額を活用して自由に学級編成ができるようになり、
これにより少人数学級や特別支援学級が大幅増。
また各都道府県が自由に教師の給与を設定できるようになったことで、一人当
たりの給料を減らし、浮いた分で新たな教職員の数を増やすようになった。
(但し正規教員の年収は従来通りで、日本の平均年収より高い。)
著者は他に、『教員の年齢構成の平準化』の影響も大きいと指摘。
実は第2次ベビーブームの到来に伴い、教員の大量採用が行われたことがあり、そ
の結果教員の年齢構成に大きな偏りが生じてしまった。これを是正して年齢の不均
衡を無くすために、非正規教員が採用されてきた面もあるという。
最後に、本書で印象に残ったものの中から2つ抜粋。
「各自治体は、将来的に教師余りで財政難に陥らないよう合格者数を少なめにし、
いつでも採用・解雇ができる非正規教員を使う。」
「正規教員の採用試験は、大学入試ほど機械的に公平・平等なわけはなく、正式に
は各自治体で“選考”と名付けられている通り、採用側の“意思”が働くのだ。」
以前教師のコネ採用が大問題になった事があったが、それはしっかり是正されたの
ではなかったのだろうか。