ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

ケーキの切れない非行少年たち (宮口幸治) 新潮社

[内容]

非行に走る少年達の実態と、その原因・更生の方法・予防法が解説されている。

[感想]

著者は児童精神科医で、医療少年院で非行少年達と関わってきた経験から、

学校教育に欠けているものと、彼らに本当に必要なものに気付いたという。

 

少年鑑別所に来て初めて障害に気付かれる子達がいるそうだ。

中には、ケーキを等分に切ることが出来ない、簡単な図形を模写することが出来

ないという子達もいて、彼らの特徴は 「感情統制が弱い・融通が利かない・対人

スキルに乏しい・身体的に不器用・自己評価が不適切」…等で 何よりも認知機能

が低く、反省以前の問題だとか。

 

現在知的障害は「IQ70未満」と定義されているが、昔はIQ85未満とされていた。

定義が変わったからといって、IQ70~84の 軽度知的障害(境界知能)の子供が

いなくなったわけではなく、著者は学校の1クラスに5人はいると考えている。

 

私が子供の頃は、学校に魯鈍(ろどん)と呼ばれる子がいることも珍しくなかった。

もしそういう子の一部が今でも普通学級で学んでいるのなら、勉強についてくの

は大変だろうと思う。   魯鈍 = IQ 50~75の人のこと。(現在は差別用語)

 

だが学校教育(特別支援教育含)がうまく機能しているとは言えず、著者は彼らに

は勉強の支援と、「感情のコントロール、対人マナー、問題解決」といった社会

面の系統だった教育が必要だと言う。

 

又、昨今主流の褒めて伸ばす教育方法について、“褒める” “話を聞いてあげる” 

だけでは、子供の問題を先送りしているにすぎないと指摘。重い問題を抱えた子

の教育は、本当に難しいものだと考えさせられる。

 

最後の章では著者考案の「覚える・数える・写す・見つける・想像する」の5つの

レーニングからなる、脳の認知機能を向上させる方法が一部紹介されている。