[内容]
非行に走る少年達の実態と、その原因・更生の方法・予防法が解説されている。
[感想]
著者は児童精神科医で、医療少年院で非行少年達と関わってきた経験から、
学校教育に欠けているものと、彼らに本当に必要なものに気付いたという。
少年鑑別所に来て初めて障害に気付かれる子達がいるそうだ。
中には、ケーキを等分に切ることが出来ない、簡単な図形を模写することが出来
ないという子達もいて、彼らの特徴は 「感情統制が弱い・融通が利かない・対人
スキルに乏しい・身体的に不器用・自己評価が不適切」…等で 何よりも認知機能
が低く、反省以前の問題だとか。
現在知的障害は「IQ70未満」と定義されているが、昔はIQ85未満とされていた。
定義が変わったからといって、IQ70~84の 軽度知的障害(境界知能)の子供が
いなくなったわけではなく、著者は学校の1クラスに5人はいると考えている。
私が子供の頃は、学校に魯鈍(ろどん)と呼ばれる子がいることも珍しくなかった。
もしそういう子の一部が今でも普通学級で学んでいるのなら、勉強についてくの
は大変だろうと思う。 魯鈍 = IQ 50~75の人のこと。(現在は差別用語)
だが学校教育(特別支援教育含)がうまく機能しているとは言えず、著者は彼らに
は勉強の支援と、「感情のコントロール、対人マナー、問題解決」といった社会
面の系統だった教育が必要だと言う。
又、昨今主流の褒めて伸ばす教育方法について、“褒める” “話を聞いてあげる”
だけでは、子供の問題を先送りしているにすぎないと指摘。重い問題を抱えた子
の教育は、本当に難しいものだと考えさせられる。
最後の章では著者考案の「覚える・数える・写す・見つける・想像する」の5つの
トレーニングからなる、脳の認知機能を向上させる方法が一部紹介されている。