[内容]
多くの若者が高校を中退してしまう原因と、その後の厳しい現実について
書かれている。 副題は『いま、貧困がうまれる場所』
[感想]
著者は元高校教諭で、現在は若者の学習や就労などを支援するNPO法人の代表。
彼らは何故高校中退の道を選んだのか、あるいは選ばざるを得なかったのか、
その原因と背景を探り解決策を考察している。
本書を読みながら私は、中島みゆきの 「あたし中卒やからね 仕事をもらわ
れへんのや」 という出だしで始まる『ファイト』という歌を思い出していた。
若い人の場合、今はアルバイトですら求められる学歴は“高卒以上”であることが
多く、中退した彼らがインタビューに応じて語る内容は、この歌の重いイメージ
そのままの社会の厳しい現実だった。
彼らの多くは貧しい家庭に育ち、取り敢えず底辺校に入学するが結局は中退。
待ち受けているのは不安定な雇用で、更なる貧困が再生産されるという。
※最近の統計では貧困よりも、進路変更・学業不振・人間関係の問題などで
中退する生徒が多いという。
「高校間の格差で生徒の誇りを剝奪し、学ぶ意欲を失わせてる。」はその通
りで、まずは小中学校で落ちこぼれさせないことが先決だと思う。
中でもやるせなかったのは “やめさせたがる教師たちの存在” だ。
底辺校(←嫌な表現だ)の教師の仕事は、学業よりも非行防止のウエイトが
大きいそうで大変だとは思う。しかし切り捨てありきの指導では救いがない。
昨年度の高校進学率は98.8%。大学は54.4%で短大・専門学校は約29%。
この社会では、学歴が就職・昇給・人生に大きく影響するので、今は高校ど
ころか、「取り敢えず大学は出とけ」とアドバイスする人も多い。
しかし私が今迄に出会った人達を思い返すに、偏差値の高い大学出身の
“出来る”人も凄かったけど、たたき上げの“出来る”人も凄かった。
レールから外れたら中々戻れない…そんな社会の仕組みは正すべきだけど、
幸せも不幸も自分次第。しっかりと現実を見据えて「フィイト!」だ。