「内容」
難病である鎌形赤血球症の治療薬を開発した日本人医師が、医療を通して人と
しての生き方や考え方を説いている。
「感想」
著者は癌の専門医で研究者。
口絵に並ぶのはケニアの子供たちで、全員、鎌形赤血球症の患者だ。
・鎌形赤血球症 = 遺伝性の貧血病で、赤血球の形状が鎌状になり酸素運搬
機能が低下して起こる貧血症。 (鎌状赤血球貧血症ともいう)
この子達は遺伝子の異常によって“想像を絶する痛みを伴う病”を発症し、殆どが
成人前に亡くなってしまうという。
本文を読みながら何度も、この子達の辛さを思いながら写真を見つめた。
病気・治療・研究、そして心のあり方について、多くの事例と共に語られているの
だが、患者や研究に対しての姿勢が、とてもひたむきで謙虚だ。
体に軽く触っただけで疾患を見ぬく医師など、不思議な話も幾つか書かれており、
何か大きなものに繋がっている意識や自覚の大切さを説いている。
以下は、ビッグバン以前の宇宙は“無”だったという説に関しての、著者の考察。
「つまり人間が 何も無い状態を考えにくいという事実は、始めには何も無かった
のではなく、全てが 始めからあったことを暗示していると…(略)。」
「反対に私たちは、生命は有限でありながら、永遠 について想像できます。(略)
それは、生命には本来 永遠 を知る心が備えられているからだと、私は思うのです。」
楽しく考えさせられることも、いっぱいの本だった。