[内容]
41才で脳梗塞に見舞われた男性の、その後の見えない障害とリハビリ、家族
や友人との関わりなどについて語られた闘病記。
[感想]
著者はルポライターで、裏社会や貧困家庭などを取材した本を多数出版。
脳梗塞により高次脳機能障害を負ったが、その後仕事に復帰を果たしている。
本書では脳梗塞の症状と、病によって得た様々な気付きが書かれており、時々
明るい語り口で笑わせてくれるが、どれ程大変だったかが窺われる内容だ。
著者の最初の症状は、突然の片手の指の痺れだった。同時に、呂律が回ら
ず強いめまいと視界の歪みも起きる。幸い入院治療によってすぐに歩くこと
が出来たが、見た目では分からない後遺症が残った。例えば「左方面が認知
出来ない」「心が不安定で感情がコントロール出来ない。」等々だ。
その後リハビリにより少しずつ回復していったが、これらの経験から著者の
妻(発達障害)の、仕事も家事も出来ない辛さなど色々なことに気付いていく。
又、今迄取材してきた虐待を受けた子供や、貧困層の中で生きづらさを感じ
ている人達は、脳機能が未発達の為ではないのか…と考えるようにもなる。
「リハビリのスキルを、回復の見込みが低い高齢者よりもっと若い人達にも。」
言ってることは尤もだと思う。しかし全国的にリハビリの施設も人手も不足し
ており、早期の実現は難しそうだ。
ネットで確認したところ 「2019年に高齢者の維持期リハビリの、医療保険か
ら介護保険給付への移行が完了。」とあった。(医師の判断により移行しない
人もいる) これによりリハビリ難民や、リハビリの質の問題が出てきてるそう
で、現実は更に厳しくなっているようだ。
著者は又『患者の多くは「大丈夫?」と聞かれれば「大丈夫」と答え、「何かし
てほしい事は?」と聞かれれば「自分でやれる」と答えてしまう。だから本人
に尋ねるのではなく、黙ってやってあげて欲しい。』と言っている。
…私も気をつけねば。