ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

『脳が壊れた (鈴木大介) 新潮社』感想

[内容]

41才で脳梗塞に見舞われた男性の、その後の見えない障害とリハビリ、家族

や友人との関わりなどについて語られた闘病記。

 [感想]

著者はルポライターで、裏社会や貧困家庭などを取材した本を多数出版。 

脳梗塞により高次脳機能障害を負ったが、その後仕事に復帰を果たしている。

本書では脳梗塞の症状と、病によって得た様々な気付きが書かれており、時々

明るい語り口で笑わせてくれるが、どれ程大変だったかが窺われる内容だ。

 

著者の最初の症状は、突然の片手の指の痺れだった。同時に、呂律が回ら

ず強いめまいと視界の歪みも起きる。幸い入院治療によってすぐに歩くこと

が出来たが、見た目では分からない後遺症が残った。例えば「左方面が認知

出来ない」「心が不安定で感情がコントロール出来ない。」等々だ。

 

その後リハビリにより少しずつ回復していったが、これらの経験から著者の

妻(発達障害)の、仕事も家事も出来ない辛さなど色々なことに気付いていく。

又、今迄取材してきた虐待を受けた子供や、貧困層の中で生きづらさを感じ

ている人達は、脳機能が未発達の為ではないのか…と考えるようにもなる。

 

「リハビリのスキルを、回復の見込みが低い高齢者よりもっと若い人達にも。」

言ってることは尤もだと思う。しかし全国的にリハビリの施設も人手も不足し

ており、早期の実現は難しそうだ。

 

ネットで確認したところ 「2019年に高齢者の維持期リハビリの、医療保険

介護保険給付への移行が完了。」とあった。(医師の判断により移行しない

人もいる) これによりリハビリ難民や、リハビリの質の問題が出てきてるそう

で、現実は更に厳しくなっているようだ。

 

著者は又『患者の多くは「大丈夫?」と聞かれれば「大丈夫」と答え、「何かし

てほしい事は?」と聞かれれば「自分でやれる」と答えてしまう。だから本人

に尋ねるのではなく、黙ってやってあげて欲しい。』と言っている。

…私も気をつけねば。