ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

読書感想『ウクライナから来た少女』(ズラータ・イヴァシコワ)

[内容]

ロシアのウクライナ侵攻から身一つで日本に避難して来た少女が、当時書いてい

た日記を元に、日本に来る迄の事を綴っている。副題『ズラータ、16歳の日記』

[感想]

本書に著者の描いた絵が沢山載っているが、16歳とは思えない上手さだ。

 

ズラータは一人っ子で、母親と小型犬と共に暮らす美術専門学校の1年生。

2022年2月24日、寝起きに母親から、早朝に爆音が聞こえたこととネットでは

「ロシアの侵攻が始まった。」と言われていることを知らされた。

 

驚いて外を見るとどこの店にも行列が出来ており、特にガソリンスタンドと銀行は

避難に備えて長蛇の列だった。この日は臨時休校となり、翌日緊張した面持ちで登

校した生徒達に告げられたのは、「明日から戦争になります。」という言葉だった。

 

数日後、安全の為に著者だけ祖母の家に行き、2週間後に自宅へ戻ったところで、

母親から唐突に「あなたは日本に行くのよ!」と言われる。

 

実は彼女は、13歳の時に偶々目にした日本語の独習本で日本に興味を持ち、独学

で勉強を始めて会話教室にも通い、いつか日本に行きたいと願っていたのだ。

家族のことを考えると後ろ髪をひかれる思いだったが、自立するためにも日本に

行くことを決心。翌朝には、国境迄同行してくれる母親と共に家を出た。

 

大勢の人々との避難の様子は想像以上に厳しく、想定外の出来事が起きたりもした。

そんな中、やっと辿り着いたポーランドとの国境の街で、日本のジャーナリストに

日本語で話しかけたことが、現在に繋がる転機となる。特に母親と共にコロナに感

染した時に、金銭的な事も含め完治する迄彼らに助けられた事は大きかった。

 

結局母親は、迷った末に予定通り取材スタッフに娘を託してウクライナに帰って行

ったが、この直後に出会ったポーランド在住の日本人女性が、著者の言うところの

正に“足長お姉さん”。手持ち金の少ない著者に、日本への飛行機代を出してくれた

上に、日本での当座の生活費と1年間分の家賃まで援助してくれた。

 

他にウクライナを出発前に身元引受人になってくれ、1人暮らしをする迄1カ月ほど

自宅で面倒を見てくれた人の存在もあり、著者自身「奇跡としか思えない」と書い

ているように、恵まれ過ぎる出会いが続いた。著者は避難の途中ずっと「なんとか

生き延びて日本を見てみたい。日本を見てからじゃないと死ねない。」と思ってき

ており、その強い思いと覚悟が幸運を呼び寄せたのかもしれない。

 

本書では、ウクライナの人達の暮らしやロシアとの関わりなども垣間見えて興味深

い。あと、避難民の中にはペットを帯同していた人も多かったことと、ポーランド

のボランティアの人達の手助けの様子を読んだ時は、有事にそういう行動をとれる

人達がいることに胸が熱くなった。

 

本書を読み終えた後に、YouTubeで著者が日本に来たばかりの頃の動画を見たが、

日本語で書かれた日記帳と、想像以上に流暢な日本語の受け答えに驚いた。

 

著者に関する最新の記事も探してみたが、見つけられなかった。

本書には随所で、家族や平和への思い、支援してくれた人達への感謝の心、日本で

の今後に対する思いが書き綴られていた。彼女が元気で頑張っていることを願う。