[内容]
著者が興信所に勤めていた時の、家出人捜索の様子が綴られている。
[感想]
失踪の背景と家族のことなど、文章の上手さもあって引き込まれるように読
んだ。著者は本書でライターデビューをしている。
・新婚の妻のことで悩んでいた、親と同居の30代の男性。
・大学の入学式前日に失踪した、両親の期待を一身に背負っていた一人娘。
・突然同居になった夫の兄とのアツレキで、義実家から失踪した主婦。
・一人暮らしでタガが外れ、遊び暮らして2浪してしまった大学生。
この4件の話が主で、どれも家族について考えさせられる内容だった。
住民票を移すと居場所がばれるため、家出人は自宅近くに居住の本拠を置く
ことが多く、又土地勘のある場所をうろついてるケースが多いという。
探偵業は、プライバシーをコソコソ嗅ぎまわる陰湿な連中と思われ、事務所
を借りるのに難色を示されることもあるそうで、実際「探偵の仕事とは人の
裏側ばかり目に付く仕事だ」と言う。
そんな中で、先輩の「人間として、優しさを持って対象者を探さないと、見つ
かるものも見つからないよ。」というアドバイスが響く。
本書が出版された前年(H11年)に、家出人捜索願が出された数は約89,000件。
ネットで去年(令和元年)の捜索願件数を見てみたら、84,850件とあり毎年同じ
ような数字が並んでいる。届けの無い人達も入れたら、一体どれだけの人が
行方不明になっているのだろう。
著者の「人間の生活には、適当なごまかしが必要な場合もある。」という言葉は、
沢山の失踪家族を見てきた人ならではの言葉だと思った。