当時Yさんは、子供と2人で暮らすシングルマザーだった。
ある日彼女の働く店に、話好きの高齢女性(Kさん)が買物に来た。話しかけら
れて受け答えしてるうちに、その人の飼猫の話になり「うちは毎年、産まれ
た子猫は保健所に持って行ってる。」と言い出した。
自分も猫を飼ってる彼女が驚いて、避妊手術を勧めたが「そんな可哀想なこと
は出来ない。」と繰り返すばかり。その感覚のおかしさに、Yさんは思わず
「そんなむごいことしてたら、七代祟りますよ!」と言ってしまった。
そこでKさんが怒ると思いきや、本気で怖がりだして「でも、だって」だったの
が「お金が無いし、自分では病院に連れて行けない…。」に変わったという。
結局Yさんが、手術代も猫を病院に運ぶのも全部面倒を見るということになり、
夕方私に電話を掛けてきた。
Kさんの家が偶々私と同じ町内だったためで、「猫を病院に連れて行くのだけ、
お願いできませんか?」と頼まれた。
しかし翌日Kさんの家に行った私は、思わず「えっ?」。
車庫にはご主人の“クラウン”が鎮座していて、娘さんも同居していた。
どうやらKさんの「お金がない」は「猫ごときに使うお金は無い。」という意味
だったらしく、私に猫を渡す時は「すみませ~ん♪」と満面の笑み。
私は決して裕福ではないYさんを思い、憤りを覚えた。
だがYさんから返って来た言葉は、「多分そうだと思ってた。いいよ。あの婆さ
んのためじゃなくて、猫のためだから。」だった。