[内容]
フツ族によるツチ族の大虐殺で、地獄を体験させられた男性の手記。
副題は『世界で一番悲しい光景を見た青年の手記』
[感想]
1994年のルワンダの人口は、フツ族85%ツチ族14%で、たった4か月の間に
80万人のツチ族が殺された。 著者はこの時15歳で、目の前で家族や親戚
43人を皆殺しにされており、彼自身も片目と片腕を失っている。
この虐殺は、フツ族出身の大統領が殺されたのをきっかけに、政府最高権力が
計画し ラジオで「暗殺はツチ族の仕業だ!ゴキブリどもを叩き潰せ!」という
メッセージが繰り返されたために起きた。
フツ族の殆どが殺人に加担していて、妻子も積極的に略奪してまわっている。
マチューテ(伐採用の刀)で殺す方法のあまりにもの残忍さに、私は何度も読む
のを中断した。いくら扇動されたからと言って、昨日まで平和に暮らしていた
人々が、これほどまで豹変することは、普通は有り得ない。
私はこの本を読むまで知らなかったが、1962年の独立宣言頃から既にツチ族
への虐殺は断片的に行われており、しかもこの対立は、ヨーロッパによる植民地
政策の産物だと言われている。何と罪深い話だろう。
ジェノサイドが始まると、スペイン人の司祭と修道女達は真っ先に逃げ出した。
茫然と見送るツチ族の人達に、「お互いに愛し合いなさい」「自分の敵を赦して
あげなさい」という美しい言葉を残して。
国連や先進国は、今もルワンダを見殺しにしたと言われている。
虐殺を指揮したフツ族高官たちは、その後ベルギーに政治亡命して優雅な暮らし
をしており、他のフツ族達もまるで何事もなかったかのように暮らしていたそうだ。
調べたところ、その後ルワンダは、「アフリカの奇跡」と呼ばれる復興を遂げ、現在
はフツ、ツチなどの出身部族を示す身分証明書は廃止されているという。