父は私が32歳の時に癌で亡くなり、心臓を患っていた母も、葬儀では気丈
に振舞っていたが、その二週間後に死去。立て続けの葬式となった。
その後、身内の葬式や結婚式などで数回帰省したが、それ以降は、北海道に住
む姉妹には「きっと近いうちに遊びに行くね。」と言いながら、なかなか踏ん切
りがつかずにいた。それは、実家がもう無くなっていたからではなく、度々起
こるXさん(高齢女性エックスさん)とのトラブルに辟易していたからだった。
私は、帰省したい気持ちを周りには言ってなかったのだが、彼女から
「ダンナを置いて無理に帰る必要は無い。あんたは若いんだから、これから
なんぼでも旅行に行ける。」と言われていた。
ところがある朝Xさんが家にやって来て、玄関先で「今朝あんたのお母さんの夢
を見た。久しぶりに北海道に帰ったらどう?」とだけ言って、家にも上がらず帰
っていった。
夢の話以上に私が驚いたのは、以前自分のことを「私のこの勝気は何とかならん
かね。」と笑って言ってたほど、誰にでも強気の人が 少し怯えた様子でしかも
涙目だったことだ。
あの優しい母が、どんな顔をしてXさんの夢に登場したのか。
Xさんの良心が見せた夢かも知れないとも思ったが、彼女の性格からしてその
可能性は低い。いずれにせよ彼女が自ら言いに来たのだ。私は母に感謝して
すぐに飛行機の予約をとり、大手を振って姉妹に会いに行った。