[内容]
阪神・淡路大震災の時に、被災したペットの救済に尽力した人々の記録。
副題『阪神・淡路大震災1556頭の物語』
[感想]
日本は動物後進国と言われるが、それは何故か。
欧米などの先進国に比べ、動物の扱いや法律があまりにもお粗末だからだ。
その日本で、あの震災の時にこんなにも頑張った人達がいたのかと、驚きの気持
ちで本書を読み終えた。
1995年1月17日早朝に神戸方面で発生した地震は、マグニチュード7.3という強烈な
もので、亡くなった人は6,434人にも上った。
そんな中で自らも被災者となりながら救済センターを設立し、未曾有の混乱の中
ペットフード会社や薬品会社からの支援も有って、1556頭もの命を守り抜いた
獣医師会会員と動物愛護団体会員、そして多くのボランティアの人達。
混乱する被災地で路頭に迷う動物を保護するのは、並大抵な事では無かっただろ
う。しかもその全てに食料を確保し、健康に気を配り、飼主のところへ戻れなか
った犬は全頭里親を探して譲渡したというのだから、只々頭が下がる。
神戸のこの活躍は、その後の被災動物救護活動のお手本になっているそうだ。
ちなみに「人間の救済さえままならない時に動物など…。」と批判する人達もい
たようだが、飼主にとっては犬猫も大切な家族。いや飼主云々の前に、動物にも
命があることを忘れてはいけない。
著者の有事に備えての提言「自分の犬・猫を社会に愛される子に育てる」は、本
当にその通りだと思う。人間や他の動物に歯をむく犬猫を保護するのは難しい。
「はたして恵まれた人は、困窮している人間に手を差し伸べるだろうか?答えは
おそらくノーだろう。」については、(絶対ではないが)私もほぼ同感。
本書は小学高学年からのお勧め本となっており、子供達にも「動物を飼うという
のは、命を預かること。」ということの意味を理解してもらえるだろう。
巻末に「動物と暮らす飼主が災害時に備えるために」という特集が組まれており、
こちらも是非多くの人に読んでもらいたい。