[内容]
人気バンド アルフィーのメンバーが書いた、ノラ猫保護のノンフィクション。
副題は『ノラ猫トイとその仲間たちの物語』
[感想]
著者が関わった沢山のノラ猫達の話が続き、軽妙な語り口で笑わせてくれるが、
涙なしでは読めない箇所も。猫達の写真がいっぱいで、可愛さもひとしおだ。
猫の世話は誰に頼んでるのかな?と思って読み始めたので、最初の頁の
「僕がノラ猫を見つけては里子に出したり、避妊・去勢の手術を施したり、
病気の猫を家で飼ったりしてるのを知っていて…(略)。」という言葉に驚いた。
著者には自身が“秘密結社”と呼ぶ、個人でノラ猫の救済をしている人達と
の繫がりがあり、その中には一人で2000匹近くのノラの面倒を見てきた女性
もいて(避妊去勢手術も全部自腹)、彼女達の行動力にも目を見張った。
昔から「猫が好きな人も嫌いな人も、ノラ猫がいなくなることを望んでるのは同
じ。」と言われる。その解決方法として、片や排除を考え、片や不妊手術によって
今ある命は全うさせたいと考える。
その違いが軋轢(あつれき)を生じさせており、著者もノラ猫の過酷な現実の
説明の後に「正しいことをしてるという自負がある割には、けっこう肩身の狭い
思いをしてるところが、ちょっとつらい。」と書いている。
印象的だったのは「でも特に猫が好きだというわけでもない。(略)例えばノラ豚
が増えてたら、豚が何匹も僕のベッドで寝てただろう。」という言葉。
ノラの保護は、たまたまノラ猫があまりにも増え過ぎていたからの行動で、実は
両生類や爬虫類が大好きで沢山飼っているそうだ。
2016年に河出書房新社から新版が出ており、印税は全てノラ達の避妊、去勢、
エサ代に充てられる。