私が30代の時のこと。日曜の午後に救急車のサイレンが鳴り響き、驚いて家の
外に飛び出した。真っ先に頭に浮かんだのは、近所の子供の交通事故だった。
しかし救急車は3軒隣の家の前で止まり、少ししてご主人が担架で運ばれて出て
きた。休日だったこともあって、この時には既に近所中の人が集まって来ていた
のだが、一緒に玄関から出てきた奥さんが、私達を見た途端露骨に嫌な顔をした。
彼女からしたら、私達は人の不幸を興味本位で眺めるヤジ馬にしか見えず、
「見世物じゃないわよ!」という気持ちになったのだろう。
皆同じ社宅の人間で、何事かと心配して見ていたのだが、まあ、野次馬と言われ
ればそうかも知れない。(幸いご主人は数日で退院)
以前外国映画のワンシーンで、繁華街で交通事故が起きたら、そこに居合わせた
人達が一斉にスマホで動画を撮りだしたので驚いたことがある。
こんな状況の時に写真を撮るなぞ、常識に欠ける行為だと思うが、実は日本でも
当たり前に見られる光景らしい。
災害の場合は、報道機関に情報として動画を提供して役に立つこともあるが、
交通事故の怪我人など、人の不幸に乗じるような写真を撮るのは失礼だし、中に
は再生回数の伸びを期待してネットに上げる人もいるというから、呆れてしまう。
それを非常識だと非難され、慌てて削除しようとしても“時既に遅し”で、至る
所に拡散されて消すに消せず、後悔している人もいるとか。
特に若い人は、デジタルタトゥ―の恐ろしさを軽く考えず、肝に銘じておいた方
が良いと思う。
あと事故や火事の時に、ただ眺めているだけの人間が大勢いたら、救助や消火活
動の邪魔になりかねない。見物人達が二次災害に遭ったという話も珍しくないの
で、これも要注意だ。
いずれにせよ、自分がされて嫌な事を人にしてはいけない…この一言に尽きる。
そういう意味では、逆に事故現場に遭遇した時に自分には無関係とばかりにやり
過ごすのも駄目で、そんな時は人としてどう行動すべきか、間違わないようにし
たい。