先の大戦の時のこと。外出先で空襲に遭った私の母が、周りの人達と一緒に
防空壕に逃げ込んだら、先に中に入っていた中年女性から「ここはあんたの
場所じゃないから出なさい!」と追い出されそうになったという。
(防空壕は場所によって、入る人が決められていた。)
その時傍にいた老人が女性を一喝してくれたおかげで、母はそのままそこに
留まることが出来たそうだが、出て行けと言うのは死ねということ。よくも
そんなことが言えたものだと思う。
非常時は皆自分達のことでいっぱいで、他人を気遣う余裕の無いことが多い。
中には感動するような素晴らしい行動をとる人もいるが、あまりにも身勝手
でヒンシュクを買ったなんて話も少なくない。
災害などの非常事態において、自衛隊や警察・消防が人命救助をする際は、
多数の人命を救うことを目指して救出の順位が決められている。
しかし、全員が助かると分かっている場合は弱い者優先でも良いが、そうで
はない時にも高齢者を優先するのはおかしいという声がある。
その意見については、高齢者の私でもその通りだと思う。それに、自分のせ
いで後回しにされた若者が命を落としてしまったら、只々辛いだけだろう。
しかしいざという時に自分がどういう行動に出るか、全く自信は無い。
助かろうとしてもがくのは生存本能によるものだから、パニックに陥る可能
性もある。その時は私の今のこの思いが、きれいごとで終わらぬよう祈るし
かない。
また、優先順位をつけるということは、救助活動を行う人にとっては過酷な
決断を強いられるということであり、その重圧は計り知れない。誰かを見捨て
た苦悩は死ぬ迄続くだろう。そういう意味でも、残された者は彼らを非難する
ような言動は慎みたいと思う。
最後にペットの救助について。以前は災害時のペットの扱いは酷いものだっ
た。しかし今、少しずつではあるが受入れ体制が進んできており、今後更に
充実することを期待したい。