[内容]
世界のスラム街で生きる人達の実態に迫ったルポルタージュ。主に子供達の
現状について書かれている。
[感想]
著者は作家・ルポライター。多数の著書があり、幾つもの賞を受賞している。
本書では絶対貧困当事者の生活や思いが綴られており、彼らの姿が統計の数字を
見るだけでは分からないリアルさを持って迫ってくる。
扱っている内容は章別に分けると以下の7つになり、どれを読んでも子供達に
とっては、ある種の人為的災害に等しいことがよく分かる。
「児童労働」「児童結婚」「子供兵」「エイズ」「ストリートチルドレン」
「餓死」「無教育」
例えばこんな子供達がいる。
・児童労働の取り締まりで、もっと劣悪な環境で働かざるを得なくなった。
・犯罪の世界に巻き込まれるストリートチルドレン。
・戦場の捨て駒として利用される子供兵。
・公用語を学ぶ機会が無く、町で人と言葉を交わすことが出来ない。 等々
絶対貧困は子供達に大きな犠牲を強いるが、子供達はどんな環境にいても生きる
ために働かなければならず、そんな中で子供らしく遊んだりもする。
当たり前だが本書を読みながら、彼らは私達と何ら変わりのない人間で、しかし
平和な先進国の価値観では測ることの出来ない難しい世界にいることに、何度も
ハッとさせられた。
エイズのコピー薬を認めず非難された製薬会社のことも取り上げられている。
私も当時、報道でこの事実を知った時には衝撃を受けたのでよく覚えているが、
他にも色々あって製薬会社の闇の深さは想像以上のようだ。
よく言われるように、私達一般の人間が出来ることは微々たるものだが、それで
も一人一人がこういった事実から目を逸らさずにいることは大事だと思う。