[内容]
生成AIの歴史と現状及び、技術的基礎・今後確実に起こるであろう社会的影響に
ついて解説。
[感想]
著者は東大研修室のAI研究者。
生成AI=世界中の人々が生み出した大量のデータからパターンを学習し、それを
もとに新たなコンテンツを生成。その分野は文章、絵画、音声から科学
的な仮説の生成まで殆ど全てに及ぶ。
本書は1年前に出版されたものだが、AIの技術とそれを取り巻く社会情勢の変化
の速さから、著者は「本書はすぐに“陳腐化”してしまうだろう。」と言う。しか
し生成AIとは全く無縁の私には今更ながら驚くことばかりで、以下はその一部。
・最新の言語モデルである GPT-4は、既に司法試験や医師国家試験に合格できる
レベルで、アートも権威あるコンテストに入賞するレベルに達している。
・ChatGPTなどが行っている情報処理方法は、何らかの文章データを組み合わせ
ているわけではなく “単純な次の単語予測の繰り返し”である。
・そのデータはどこにあるのか。答えは「全ては大量にあるWebページから取得
してきている。」で、つまりWebに公開されていない情報については答えるこ
とが出来ないということだ。
(生成AIは学習データを無断で使用していいのか?)
著作権法により原則的には著作権者の許諾なく著作物を利用できるが、不正な使用
にならないよう注意と対策は必要。日本の場合、現在は拘束力のないガイドライン
が定められているのみだが、AIをめぐる法制度強化に向けた動きが進んでおり、著
者は「強く規制すると、あらゆるサービスの利害が阻害される。」と危惧する。
※つい先日(1/6日)政府が、生成AIに関する新たな法案を通常国会に提出する方針を
発表。悪質な事案に対しては国が調査を行い、規制と技術革新の両立を目指す。
(雇用の未来)
長年言われてきたのとは真逆で、大きく影響を受けるのは“高学歴で高いスキルを
持つホワイトカラー”の方だとか。また全職業の8割がなんらかの影響を受けると予
測されており、既に一部職種が生成AIで代替できるとして、採用凍結や解雇、報酬
を10分の1にするなど、世界的に問題が発生しているという。
ちなみに、ブルーカラーにはあまり影響が無いと考えられている。
(文化芸術・創作に与える影響)
特別な創作能力が無い人間にも、質の高い作品を生み出せるようになったが、生成
AIに “革新的創造性”は無いらしい。(人間の場合も似たようなものだが。)
面白かったのが、人はAIが制作した絵画や音楽よりも、人間が制作した作品の方に
惹かれる傾向があるという点だ。これは私も同じなので、よく分かる。
なので今後は、AIっぽさを消した作品が増えるかも。
生成AIを使って声を変換した詐欺やなりすまし、他人の画風を真似たフェイク作品
を作成するなどの事件が発生している。既に様々な対策が検討されているが、今は
回避しようとする側とのイタチごっこが続いている状態だという。
技術の発展が速すぎるため、本書では具体的な生成AIツールの使い方についての説
明は敢えてしなかったそうだが、
「良い回答を引き出すための、プロント(入力する指示文)の工夫」
「営業や販促における生成AIの生かし方」 「教育目的に役立つユースケース」等、
より有意義に活用する方法や実例が色々紹介されている。
ラストは『生成AI時代に求められるスキルとマインドとは?』と題した、師との対
談となっている。