[内容]
昔とは様変わりした奨学金の実態を告発し、その原因と解決策を解説。
[感想]
本書は弁護士や研究者など、複数の著者によって分担執筆されている。
呼び名は “奨学金”だが、その実態は教育ローン。
その返済に苦しむ若者が増えているが、何故こんなことになってしまったのか。
日本育英会は2004年の独立行政法人化に伴い、日本学生支援機構に引き継が
れ、それによって延滞金の回収方針が変わったという。
20数年前のこと。30代の知人女性が「奨学金?返してないわよ。」と悪び
れずに笑ったので驚いたことがある。
実際 日本育英会の時代は返済に寛大で、踏み倒す人が多かったそうだ。
彼女は「奨学金は10年で時効」などと言っていたが、今は容赦の無い債権
回収で、そんなズルい考えは通用しない。
借金してまで大学に行く一番の理由は、就職の門戸が狭められてしまうからだそ
うだが、しかし待ち受けていたのは非正規採用(低賃金)で、その時に初めて現実
が見えたという人もいる。
借りたお金は返すのが当たり前で、実際大多数の人がきちんと返済を頑張ってい
る。しかし20歳前後の若者に、簡単に多額の借金を抱えさせることは問題で、貸す
側の在り方も問われ始めている。また、親に経済的余裕が無くて、その負担が全て
本人にかかって来るというのは、仕方がないで済ませていい問題ではないと思う。
親も果たして理解していたのか…というケースも多いそうで、中には親が子供名義で、
生活の為に借りてる例もあるとか。
未来ある若者を潰さない為に、今の奨学金制度は本気で見直すべきだと思うが、
学生を採用する企業の、社会的責任を問う声も多い。