小学生の時に父親から囲碁の初歩(の初歩)を教わり、たまに姉とゲーム感覚
で遊んでいた。結婚してから定石の本を読むようになり、小学生の3男が
囲碁教室に通い始めたのを機に、私も別の日に教わるようになった。
入会してすぐに先生からの紹介で、同じ碁会所に通う女性と友達になり、
週1で交互にお互いの家で打つようになった。きれいな碁を打つ人で、逆に
それが上達の妨げになってると自虐していたが、私よりは強くて初段目前。
教え上手で、おしゃれでユーモアのある楽しい人だった。
それから2年ほど経ったある日のこと。その日は我が家で碁を打っていたの
だが、彼女との対戦を希望していた知り合いの老人(М氏)が、キッチリ断った
筈なのに家にやって来た。
彼女は戸惑いながらも相手をしてくれたが、М氏は “力碁” (ちからご)の人
で自分の方が強いと勘違いしており、時々彼女を指導しながら対戦を進めた。
彼女はその度に「おかしくないですか?」と言いながらも、М氏を立てて石を
置き直したりしていたのだが、この老人、最後に「あれ?わしが勝ってしまっ
た。」とやってしまった。
私は彼女が帰る時にМ氏の失礼を詫びたが「あんな騙すような手を打って…。
申し訳ないけど もうここには来ません。」と涙目で言われてしまった。
М氏がわざと勝ったわけではないのは分かってる。しかし下手(したて)に見ら
れたくなくて、ムキになり過ぎた。実はこういうタイプは珍しくなくて、彼
らに共通してるのは、“昔取った杵柄”で普段は碁を打たないという点だった。
碁会所にはそんな人はいなかったが、他にも思うところがあって、私はこの
日を最後に碁を打つのをやめた。
先日人づてに彼女が亡くなったと聞き、驚きと共にあの時の事を思い出した。
Hさん本当にどうも有難うございました。 合掌