ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

かけがえのないもの (養老孟司) 新潮文庫 

[内容]

著者の10年間の講演内容を、出版社がまとめたもの。

[感想]

固定観念を捨てて自分で考えて行動することと、自ら選ぶことの大切さを説い

ている。そして「何でもいいが、人間が意識して作ったものでないものを、1日

に1回15分でいいから見てほしい。」と言う。

 

子育てに関しては 「植木と同じで予定を決めれば決めるほど子供の未来であ

る財産は確実に減ってしまい、切っては眺め眺めては切ってきちんと手入れし

ていると、いつの間にか出来るものがある。」と述べている。

 

私はお葬式から帰った後に塩をまくという行為が嫌いなのだが、著者も「それは

死者に対する差別である。人は死んでも人です。」と言ってるのが嬉しい。

 

「実は私たちの社会は脳が化けた社会。」「外部の自然が失われることと、我々の

心の中から自然が失われていくのは殆ど平行している。」…等々、言われてみれば

納得の話が多く、楽しく読ませてもらった。

 

著者は又、杉林は昆虫が棲まないから嫌いだと言う。 

昆虫もそうだが、杉林は花粉症や野生動物が餌不足で人里に下りてくる一因と

なっている為、広葉樹林への転換を望む声は多い。

 

昨年『国有林野理経営法』が改正された。

具体的には「全国の国有林を最長50年間、大規模に伐採・販売する権利を

民間業者に与える」というもので、色々な問題が絡み合って簡単にはいかな

いだろうが、伐採の跡地が今後どのように再生されるか、多方面から注目さ

れている。