私は戦後生まれだが、物心がつく頃にはまだ、義足で白い着物姿の傷痍軍人
が街角でアコーディオンを弾く姿があった。
10才の時お菓子とお遊びを楽しみに、日曜日に近所の子達と一緒にモルモン
教会に通っていた。その時の集合写真を見ると、全員一目で生活レベルの低
い子達であることが分かる。皆、町で普通に暮らす子供だったが、こんな風
に私が小さい頃の生活はまだ“戦後”を感じさせるものだった。
私が今迄に観た戦争映画で特に印象に残っているのは、『二百三高地』(日露戦争)
『連合艦隊』(太平洋戦争)で、二百三高地では さだまさしが『防人の詩』を、
他にも幾つか良い映画があったが、しかしもう大分前から日本の戦争映画を観
ていない。どうしても「なんか違うな~。」と感じてしまうからだ。
昔の戦争映画には、兵隊の経験のある役者が多く出ていて、黙っていても
それが身体全体から滲み出ていた。特に子供の時に観た『南の島に雪が降る』
(加藤大介主演)は、それが顕著で秀作でもあった。
現代の役者は皆さん、どんなに上手な人でも “恵まれた時代に育ち 教育も
きちんと受けている”というのが、どうしても顔(特に目)に滲み出ていて、
今一つ映画に入り込めない。
昔の役者と比べるのは詮無いことで、ならばドキュメンタリーが良いかとい
うと、編集の意図によって意味が変わることがあるので、これもまた難しい。
あと、世界情勢のせいか歳のせいか、日本人のものは以前よりも身につまさ
れるようになり、それもあって日本の戦争映画とは遠ざかったままだ。