[内容]
マリア・カラスの絶頂期の録音を使って、本人の口パクで『カルメン』の映画を
撮るというストーリー。 (2002年 製作国 伊・仏他)
[感想]
マリア・カラスの人生と、歌劇『カルメン』が二本立てで同時進行しているような
面白い映画だった。
この物語はフィクションで、実際にマリア・カラスの口パクのフィルムが存在する
わけではないが、この映画では全て本人の歌声が使われていて、特に劇中の
『カルメン』は素晴らしくて必見だ。
パリの豪邸で暮らす53歳のカラス。100年に一度の逸材と言われるオペラ界の
伝説の女性だったが、かつての愛人である世界的な大富豪オナシスがケネディ
未亡人と結婚したことや、日本公演の失敗などで、失意のため何年も表舞台か
ら遠ざかっていた。
ある日、以前カラスと一緒に仕事をしていた音楽プロデューサーのラリーのもとに、
ジャーナリストの女性が「彼女の様子を見てきてほしい」と相談に来た。
初めはカラスに適当にあしらわれるが、ラリーは彼女をスタジオに連れて行き、昔
の公演の映像に彼女の絶頂期の歌声をかぶせてみせる。そして録音だけはあるが、
カラスが舞台で演じたことの無い『カルメン』の映像を一緒に作り上げようと持
ちかける。
本物のカラスが口パクに賛成するとは思われず、実際映画の中のカラスも葛藤し
続ける。しかし全編に流れる本物の素晴らしい歌声と、主演女優の巧みな演技で、
とても魅力的なカルメンの舞台が完成する。
歌劇の舞台づくりだけではなく、カラス自身の情熱とプライド、彼女を取り巻く人達
の心の機微もきちんと描かれていて、見応えのある映画だった。