兄は48歳の時に、インフルエンザをこじらせて亡くなった。
兄を乗せた霊柩車と、私達親族が乗ったバスが一緒に火葬場に向かってい
る時、突然バスの運転手さんが少し長めのクラクションを鳴らした。
顔を上げて見たらそこは学校の前で、兄が受け持っていたクラスの生徒達
が歩道に並んで合掌する姿が目に飛び込んで来た。私は40代の若さで死
んだ兄の無念さを思い、涙が止まらなかった。
両親は兄が亡くなる何年か前に、病気で相次いで亡くなっている。
兄が両親の死後に実家のお墓を建て直していた事を、遠く離れて住む私は
その時まで知らずにいた。しかもそのお墓には、建立者として他の姉妹と
共に私の名前も刻まれていた。
時々、葬儀やお墓に関して心温まる話を聞く。しかし実は揉めたという話も
珍しくない。以下は親戚・知人から聞いた話だ。(遺産は絡んでいない)
・夫の借金と嘘でトラブル続きだった妻が、夫の葬儀後 夫の両親に「そち
らのお墓に納骨させてもらえませんか。」と頼んだが、断られた。
・離婚して長年家族とは疎遠だった老人が病死し、連絡を受けた息子さんが
遺骨を引き取りにきた。親族が葬式をあげてやってと頼んだが「母も私も
酒乱の父から苦しめ続けられました。」と言って断られた。
・亡くなった弟(高齢)の葬儀の後、弟の再婚相手(故人)の息子さんから「義
父のお骨を引き取ってほしい。」と言われ、兄が弟のお骨を引き取った。
普通は喪主を務めた人が祭祀後継者となり、遺骨も喪主に帰属するものだが、
喪主が納骨を拒否した場合、道義的問題はあっても、法的にどうこうは出来
ない。色々事情はあろうが、人の死はそれまでの関係性を顕わにするようだ。