ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

妹が見た亡き兄の夢 

眠っている時に見る夢は、全て脳科学で解明できると断言する人達がいる。

しかし夢にまつわる不思議な話は世界中にあり、私も稀にだが、 どう考えて

も“無意識の脳による作り話”とは思えない夢を見ることがある。

今日は、妹が見たそんな夢の話を書こうと思う。

 

私が40代半ばの時のこと。兄が亡くなったという知らせを受け、飛行機で郷里

に駆けつけた。通夜の日遅くに着いた斎場の施設には、兄が勤務していた学校

の教頭先生がまだ残っておられ、私に兄が入院した時のことを話してくれた。

 

肝臓が悪かった兄はインフルエンザをこじらせてしまい、何日か欠勤が続いて

いた。心配した教頭先生が兄宅に見舞いに行ったところ、兄が階段の下で倒れて

いるのを見つけ、慌てて救急車を呼んでくれたのだという。

 

兄は共働きの妻と幼い息子、そして妻の姉(Cさん)と暮らしていた。

(Cさんには少し問題があって働いた事が無く、兄夫婦の世話になっていた。)

兄嫁はCさんに留守中の兄のことを頼んでいたが、Cさんは救急隊員の問いに

「階段から何かが落ちる大きな音は聞こえてたけど…。」と答えていたそうだ。

 

何故Cさんは様子を見に行かなかったのか。発見が早かったら兄は助かったか

も知れないと、葬儀の間中涙が止まらなかった。しかし私の姉妹は、そんな彼女

に優しく接している。過ぎた事を悔しく思う私は心が狭いのか…。

 

兄が亡くなってから何年か経ったある日の夕方、脳裏にフッと兄の顔が浮かん

だ。遠くを見るような寂しい目をしていて、それが気になったが私の作り出し

たイメージかも知れないと思い、すぐに打ち消した。

しかしどうしても頭から離れなかったため、数日後郷里の妹に連絡を取り、初

めて私のあの時の気持ちを打ち明けた。

 

驚いたことに妹たちは、兄が階段から落ちた事実を知らなかった。

更に驚いたのは、妹が兄の死後に見たという夢の話で、以下がその内容だ。

 

妹は少し高い位置から、その夢の様子を眺めていた。

それは幅が2m強の長い階段で、その上には大きなお寺の本堂が建っている。

本堂の手前には布団が敷かれていて、そこに亡き兄が苦しそうな怖い顔で横た

わっていた。

 

妹が布団の傍に行ったところ、突然兄が起きあがったので慌てて階段を駆け降

りたのだが、何と兄が追いかけて来た。(上から見ていたのはここ迄) 

 

妹はすぐに階段の下の小さな事務室に隠れ、兄がその前を行き来して捜す様子

を窺っていたところで、ぱっと目が覚めた。

 

妹はこの夢を見て以来、(思い当たる事は無いが)兄が何か自分の事を怒っている

のではないかと、誰にも言えずとても辛い気持ちでいたという。

しかし私からの電話で初めて兄が階段から落ちたことを知り、やっと気付いた

そうだ。「Sちゃん(兄)は私に、それを教えてくれてたんだ!」と。

 

この話を聞いた私は、Cさんへの怒りが再燃(この時彼女は既に故人)。私が死

んだら、Cさんを探し出して決着をつけたいと考えていた。

しかし今は、只々 兄の魂が安らかでいることだけを祈っている。  

                                                                                                             合掌