今から30年ほど前、夫が1年間単身赴任をしていた時のことだ。
私は、Xさん(エックスさん。年配女性)のキツい性格に悩まされるようになり、
ノイローゼに近い状態になってしまった。
当時は専業主婦で、子供達を学校に送り出して1人になると、頭の中でXさ
んのことがエンドレスにまわり続ける毎日。
その日の午前中も私は家事を終えた後に、椅子に腰かけて庭を眺めながら
ウツウツとXさんのことを考えていた。
その時突然母から、「ほたる~、Xさんが来たよ。」と優しく声を掛けられて、
我に返った。
しかし母は8年前に亡くなっている。私は有り得ないという思いと、懐かし
い母の声を聞いた嬉しさで、暫し呆然としていた。
それから5分も経っただろうか。家の前に車を止める音が聞こえたと思ったら、
この半年間、夫が不在の時は決して家には上がらなかったXさんが、不機嫌な
顔をして入って来た。
※Xさんは、黙って部屋の中に入って来ることが多かったが、地元の人によると
この地域にはそういう老人が多く、悪気はないらしい。
母は娘を心配して、見守ってくれていたのだろう。この時のことを思い出すと、
今でも胸が温かくなる。