[内容]
どら焼き屋の店長と元ハンセン病の老女、常連客の女学生が織りなす物語。
(2015年 製作国 日本) 映画賞受賞
[感想]
一昨年亡くなった樹木希林の最後の主演作。
どら焼き屋の雇われ店長千太郎は、訳ありのどことなく疲れた雰囲気の男だ。
ある日、この店の求人の貼り紙を見て、1人の老女(徳江)が応募してきた。
初めは断った千太郎だったが、彼女の持参した手作りあんの極上の味に感動。
即、採用とする。今迄この店で使われていたのは、缶入りの業務用あんだった。
徳江は、10代半ばからハンセン病患者として施設に閉じ込められて生きて来た
女性で、今も施設で暮らし、店にはそこから通っていた。しかしあんが評判にな
ったのも束の間、ハンセン病に対する誤解でバッタリと客足が途絶えてしまう。
今、新コロナウイルスをばら撒いたとして、世界のあちこちでアジア人への差別
や暴力事件が起きているが、こうした“感染の恐れ”による偏見・差別は、国や
時代が違っても変わることはなさそうだ。
実在の療養所でも撮影が行われ、高齢となった入所者もカメラに収められている。
徳江はその後病気で亡くなるが、千太郎はこの老女から、毎日の生活や風景を
愛おしんで生きることの大切さを学び、前向きに生きられるようになっていた。
大鍋の中のあんが出来上がる様子が、徳江の解説と共に映し出されるシーンが
あるのだが、これが「小豆の声を聴きながら、話しかけながら」という丁寧さで、
これ程心を込めてあんを作る人が他にいるだろうかと、見入ってしまった。
私も(かなり)久しぶりに、あんを作ってみた。で、そこそこの仕上がりにはなったが、
徳江のあの、あんに対する愛情と根気はやっぱり凄い…と脱帽するオチとなった^^;。