数十年ほど前、タチの悪い夏風邪が猛威をふるった。
小学生の息子もかかってしまい、髄膜炎の恐れがあるということで、総合
病院への紹介状を渡された。
そこは夏風邪の子供達であふれ、6~7人の子が待合室で点滴を受けていた。
その翌々日のこと。医者から「もう回復に向かってますよ。」と言われた。
しかし鎮痛薬の効果は数時間だけで、何度も激しい頭痛をぶり返しており、
高熱も続いていた。私はそのことを伝え、頭を下げて検査をお願いした。
医者は不機嫌な顔になったが、若い医者に髄液検査(背骨に太針を刺す)を指示
した。私を馬鹿にする言葉を添えて。
不安顔の研修医(?)は何度も失敗し、息子は泣き叫んだ。
医者は検査結果を見ながら、私の顔も見ず「どうしますか?心配なら入院も出
来ますが?」と言った。私は先程からの医者の態度にショックを受けていたが、
“入院も可”の言葉に感謝して「宜しくお願いします。」と頭を下げた。
入院して3日目。他の子達は順調に元気になっていくのに、息子は上半身を起
こすことさえ出来なかった。検温に来た看護師さんに不安な気持ちを伝えたら、
「息子君は他の子の10倍の数値で、ホームランだったからね~。」と言われた。
驚いた私が「え?先生から何も聞いてないんですが。」と言うと、しまった!と
いう顔になり、何も言わず逃げるように病室から出て行った。
息子はやはり髄膜炎だったが、1週間後に無事に退院出来、私は心から安堵した。
入院させてもらったことには、感謝している。しかし不信感は拭えないままだ。
もし私があの時入院しないと言ったら、どうするつもりだったのだろう。
医者に質問したらキレられたなどの話は珍しくないが、患者の多くは遠慮して
言葉を選んでいる。医者は、患者の訴えをもっと真摯に受け止めてほしい。