ほたるBBの 絵と 本と 雑感日記

60代後半に再開したお絵描きと、読書の備忘録。考えさせられたことなども綴ります。

ひきこもりのライフプラン (斉藤環) 岩波ブックレット

 

[内容]

引きこもりについて、主に経済的な視点から対策を検討。共著、畠中雅子

[感想]

現在日本では、15~64歳の引きこもりが100万人を超えるという。

彼らは、親が元気なうちは生きていける。だが親が死んだら?

そこまで追い詰められたら働きに出られるのか。いや、そう簡単にはいかな

いだろう。それなら、最悪の事態に備えて、何とか親の資産を活用できるよう

(親自身が)プランを練ってみよう…というのがこの本の趣旨だ。

 

斎藤氏は精神科医で、畠中氏はファイナンシャルプランナー

前半は、引きこもりの実態と重要な症状・対応の他、家族の在り方や福祉

サービスなどについて解説。後半は、子供が働けない状況が続くことを前提

とした、サバイバルプランの作成と分析。

 

上下2段組ではあるが、わずか100ページ程の中に本当に必要な事柄が、

具体的且つ無駄なく網羅されており、引きこもりの言いなりになることを諫め

ながらも、本人とその親の不安な気持ちを十分考慮していて、当事者には

大変参考になる内容だと思う。

 

世間ではよく、引きこもりは甘やかさず突き放すべき、ということが言われる。

確かにそれで立ち直った人も、大勢いるだろう。だがケースバイケースで、

その助言に従って失敗しても、誰も責任を取ってくれるわけではない。

 

以前から、引きこもりの「8050問題」と、彼らの多くが将来生活保護受給者と

なって財政を圧迫する可能性があることが言われている。

※8050問題=親が80代、子どもが50代を迎えた際に問題がより深刻化する

 

子供が人に迷惑をかけず最低限の生活を維持できるようにと、自分の死後の

準備をするのは、“色々やってみたけど駄目で、悩み苦しんだ末の結論”の筈。

私はこの結論には、甘やかしよりもむしろ、現実を直視した親の覚悟を感じる。