3カ月間だけパートで働いていた、40代半ばの時のこと。
お酒の席に招かれてお邪魔したお宅に、初対面の女性(ALさん)がいた。
彼女はお酒の飲めない私とは反対に、よく飲み、場を盛り上げるのが上手な
楽しい人だった。
すっかり酔ったALさんに、何か仕事をしているのかと聞かれ、答えた後に同
じ質問を返したら、「私は時給500円や600円のはした金で働く安い女じゃな
いわよ。」と、切り返すように即答されて絶句。
この時私の頭に、パート先の女性達の顔が浮かんだ。
長年の現場作業で指の関節が変形し、よく指をさすってるAさん。
ベテランの筈なのに不器用で、時々叱られながら頑張ってるBさん。
色々な仕事をテキパキこなす、リーダー格のCさん。
彼女達の多くは家庭を第一に考えて、パートで働くことを選択していた。
もし後日シラフのALさんに あの“安い女”発言のことを話したら、(多分覚
えてはいないだろうが)本気で私に謝ったと思う。でも、あれが彼女の本心だ。
それから約10年後、ALさん夫婦が大きな借金を抱えてしまったため、彼女が
パートで働き始めたと人伝てに聞いて驚いた。
まず思ったのは、「あのALさんが、よくパートに出る決心をしたな~。」だ。
だが、昔は接客の仕事をしていたそうで、他のことでは人一倍気配りの出来る
人だったから、その決心はきっと彼女を良い方向に導いたと思う。