[内容]
最近増えている「発達障害もどき」を解説し、そこから抜け出す方法を指南。
[感想]
著者は小児科医で文教大学教授。子育て支援事業「子育て科学アクシス」代表。
発達障害という概念が急激に教育現場に広がったのは、2002年に文科省から
“発達障害のある児童生徒の割合は6.3%”という数字が出たのがキッカケで、そ
の後10年おきに同様の調査が行われているが、これらは専門家ではなく学校現
場の教師が児童の言動を評価する形で行われたものだとか。
そもそも発達障害は、“脳の発達に関わる生まれ持った機能障害”で、著者は
「本来発達障害と診断できるのは免許を持った医師だけ」「最近は保育士や学
校の先生から“プレ診断”を受けるケースが多くある」と、疑問を呈する。
また文科省の調査では、発達障害が疑われる子供はこの14年で14倍に増えてい
ると言われ、この点についても著者は長年の臨床経験から、増えているのは発
達障害ではなく“発達障害もどき”ではないかと指摘。
脳科学の研究により、脳内では生まれた時から死ぬ日まで神経ネットワーク(細
胞のつながり)が作られ続けていることが分かっており、著者はそれを踏まえて、
不登校・不適応などで発達障害が疑われた時は変わるチャンスである…と、子も
親も共に生活習慣を見直すことを提唱。
“もどき”の症候を持つ子供には、広い意味で環境が整っていない子が多いので、
まず親が率先して生活リズムを整えることが重要だそうだ。
特に睡眠不足は子供の問題点を引き起こすことが多いので、親子共々朝日を浴び
十分に眠り、きちんと食べること。要は規則正しい生活をしなさいということだ。
親子のコミュニケ―ション不足が発達障害もどきに繋がることも多く、子供にイ
ライラをぶつけたりきつく叱ったりすると、子供の攻撃性が増すことがあるので、
そんな時は子供自身を否定するのではなく行動の変化を促すことが大事だという。
子供の年齢にあった役割を与えることも大事で、これが自己コントロールを育て
る訓練になり、親に感謝されることで子供の自己肯定感も育つそうだ。
著者は又、睡眠不足になるほど勉強や沢山の習い事をさせるのは逆効果で、子育
ての目標は“立派な原始人”を育てることだと言う。
脳を育て、自分の命を守り、生きていくためのスキルを身につける方法は、どれ
ほど文明が進化しても原始時代から変わっておらず、子供の時にきちんとした生
活を守ることによって脳もしっかり育つそうだ。
薬はあくまでも、どうしても足りない部分を補うもので、服用する時に何よりも
大事なのは本人の“同意と理解”。
医療機関選びや親と教師・保育士の連携も大切で、本書ではその事例と具体的な
アドバイスにも多くの頁が割かれている。