[内容]
全国で「ひきこもり女子会」を主催する著者が、女性の引きこもりの実態と自身
の引きこもり体験を綴っている。副題『就労より自立より大切なこと』
[感想]
著者は高2で不登校になり、30代まで断続的に引きこもり生活を続けていたが、
2012年から当事者活動を開始。
現在は「一般社団法人ひきこもりUX会議」代表理事。
UX会議では4年前に女性の引きこもり実態調査を実施。1686名の回答を得、そ
れを元に分析して、その後全国で女性限定の当事者会を開催している。
ちなみにこのような調査は過去にも公の機関で行われてきたが、これほど多くの
当事者が回答した例は無いという。
女性はなまじ“主婦”“家事手伝い”が肩書として通用してしまう事から、今までは
見えてこなかったが、女性の引きこもりは想像以上に多いという。
本書では女性達の実情と本音、支援の課題、家族や自治体に望む事などが述べら
れており、中でも著者の体験「私はなぜ/どのようにひきこもったか」はリアル
で読みごたえがあり、胸に来るものがあった。
引きこもりになる主な原因は、「心身の不調・病気・障害」「家族との関係」
「不登校、いじめ」「人間関係」「性的マイノリティ」などで、7割近くの人が
これらの要因が3つ以上ありと回答している。
リストカットや摂食障害・パニック障害を抱えている人も多く、その中には虐待・
DV・親からの過保護・過干渉・支配など、女性ならではの原因もあると考えられ、
男性に苦手意識がある人が多いという。
引きこもりには「働かない」「甘え」「怠けている」等、ステレオタイプのイメ
ージがあるが、深堀りしていくとそんな単純なものではないことが見えてくる。
サポート側の問題としては、とにかく「就職ありき、社会復帰ありき」で、当事者
の「引きこもりを脱したい。でも就職を考える段階ではない。」という状態に理解
が乏しく、「相談先で説教をされた」「たらい回しにされた」と話す人も多い。
それに対して著者は、引きこもりの人にはまず居場所と自己肯定感が必要と訴える。
著者は又「ひきこもれるのは親が裕福だからと言われるが、それは誤解だ。」と言
う。親の亡き後自宅で衰弱死する事例が全国で起きているが、その原因が困窮とは
限らず、社会や人と関わるくらいなら死んだ方がいいと考える人もいるそうだ。
以下に本書で印象に残ったものを幾つか抜粋。
「アウトリーチ(訪問支援)は、本人が望んだ場合に限る。そうでなければ、当事者
にとっては恐怖以外のなにものでもない。」
「女子会に行けるならひきこもりじゃない、という声が寄せられるが -(略)-勇気
を振り絞り、時に“命がけで”参加しに来ることは知られていない。」
「『せめて朝は起きよう、散歩くらいしよう』というのもNGで、そんなことがで
きればとっくにしている。」
本書では、引きこもりに対する行政や民間の支援団体、企業、地域、家族会などの
現状も紹介されている。