[内容]
GAFAによるIT業界の支配構造を解き明かし、メタバースを巡る覇権争いの
状況と未来の予測。 『副題』デジタル利権が塗り替わる!日本の正念場
[感想]
著者はITビジネスアナリストで実業家。
前書きにこう書かれている。「GAFAを代表するようなビッグテックが世界各
国の政治を支配し、個々人の生活を監視しているという実態に警鐘を鳴らす。」
GAFAとは、ご存じGoogle、Amazon、Facebook、Appleのこと。
この4社の共通点は、IT業界をリードし、世界中で利用され、世界時価総額ラン
キングの上位を占めていること。これらに加えて注視されているのが
“世界中で言論統制と世論操作を行う最強の企業である” という点だ。
私達は世界の情報を自由に得られる時代に生きている。…私もそう思ってきたが、
実際はGAFAによって様々に操作された中で動いているだけなのだとか。
本書では 先の“米大統領選挙介入”を始め、GAFAが今迄にどんな事を行ってきて、
現在どういう状況なのかが詳しく解説されている。以下はその一部。
◎政治癒着と言論統制…GAFAは莫大なサーバー代、地代、電気代などをカバーす
るために国家を頼るしかなく、それが国家のニーズとマッチ。
先の米大統領選では沢山の投稿が削除され、アカウントも凍結された。
◎中国依存…データセンターのコストを下げるために、安価な中国・台湾製のサー
バーが爆発的に売れ、IT業界の中国依存を強める結果となった。
◎半導体は電子機器に不可欠な存在で、半導体チップは今、中国がビッグテックを
支配するツールの一つとなっている。
更にGAFAの問題点を個別に見ると、
★グーグル…インターネットの入り口の殆どを独占しており、検索結果を自社の
都合を優先して変更。その結果、EUから罰金を科されるなどしている。
グーグルは又、検索から外しているコンテンツが結構あり、それをさ
れると一切検索に引っかからなくなる。
★アマゾン…販売業者の売れ筋商品を割り出して、自社でも同様の商品を取り扱い、
自社商品を優先的に表示している。
★フェイスブック(メタ)…脅威となる新興企業を買収して、競争相手を無力化。
★アップル…支配的な立場を利用して、新規参入や競争を妨げている。
将来GAFAによる支配構造を覆すと言われているのがメタバースで、第5章ではメ
タバースの歴史と今後の予測が述べられている。
※メタバース = インターネット上に構築された三次元の仮想空間のこと
・メタバースの実現に向けての課題は、三次元映像技術である。
・アバターで生活することによって、差別ならぬ区別(文化や民族の違い)も排除
できる。
・若者などの参加者が儲かる仕組みを入れることは必須。
・メタバースの成功で、中小企業は徐々に弱体化していく。 等々
日本がIT分野に弱い理由として、ネットには様々な意見が上がっているが、著者
は「日本政府と大企業のトップが腐敗していて、台湾、中国、韓国に技術を移転
してきたから」「事業に予算を出さないから。」とバッサリ。
本書を陰謀論的な内容と見る向きもあり、実際そんなことを言って大丈夫なのか?
と思う程、ズバズバと切り込んでいる。その為に著者は、今迄に様々な制裁を受け
て来たそうだが、それでもスタンスを変えないメンタルの強さには驚くばかりだ。