[内容]
会社員や自営業者へのインタビューによる、会社倒産のドキュメンタリー。
[感想]
「まさかうちが潰れるなんて」…本当に誰にでもどの会社にも起こり得ること
で、かつて山一證券が倒産した時は日本中が驚いたのを思い出した。
本書に登場するのは工務店・派遣会社・運送会社など16の様々な分野の人達
で、ああ会社が潰れる時はこんな風になっていくんだなあ…と、やるせない気
持ちになるのと同時に、考えさせられることも多かった。
本書は2013年の出版で、経営に問題が無くとも災害が降りかかるように倒産
に追い込まれていくケースもあり、リーマンショックが日本に与えた影響の大
きさを再認識させられた。
どんな立場でも職を失うのは大変なことだが、自営業者のそれはサラリーマン
の比ではない。会社を清算するのにもお金がかかり、倒産会社の経営者のかな
りの数が放置逃亡(夜逃げや自殺)をするという。何とも切ない話だ。
このコロナ禍で崖っぷちのお店や会社は沢山あり、金策に走り回っている社長
も多いと思うが、本書では引き際を見極めることの大切さを教えられる。
経営者は勤め人になろうと思っても、転職は難しいと言われる。
よく聞くのが「プライドが高くて人の下で働けない」「せっかく採用しても腰掛
で、起業のチャンスを窺っている」というものだが、高望みせずまずはどんな
仕事でもやってみることだろう。
「今はもう運転資金のやりくりに腐心しなくてすむからホッとしてる。」
「もっと早い段階で経営を断念していたら。」の言葉が重いが、本書に登場する
人達が最悪の事態に陥っていないのが、読んでいて救い。